本田圭佑が加入したボタフォゴとは?
2020年 02月 11日
今、ブラジル リオデジャネイロは、本田フィーバーが巻き起こっているようだ。
ボタフォゴのオームページを見ると、トップページには本田のどアップの写真とともに”HONDA CHEGOU(本田がやってきた)”、 ”本田圭佑”とデカデカと書かれている。
ブラジルサッカー好きな日本人の私にとっては嬉しい限りだが、ちょっとした不安も感じてしまう。
いくらミランで10番を付けていたといっても、もう3年も前までのことだ。メキシコ、オーストラリアのクラブにも所属してそれなりの活躍はしたが、世界的なスター選手としては物足りないだろう。
その後、約半年の浪人期間を経て、オランダのフィテッセに所属したが、4試合に出場しただけで2019年12月に退団している。
確かに日本代表の中心人物で、2010年から3大会連続でW杯に出場しており、全3大会でゴールを決めており、最も目立っていた選手だろう。ブラジル国民からすると、おそらく一番名の知れている日本人選手だと思う。
しかし、そうはいっても、このフィーバーぶりは、ちょっとやりすぎな気がする。ちょっと前まで、ジャポネス(日本人)とはサッカーの下手な人のことを指していたのに、だ。
日本人選手のブラジルのクラブへの移籍というと、1998年にサントスFCに期限付き移籍を果たした前園真聖が思い浮かぶ。
私がブラジルへ渡る前のことなので当時のことはよくわからないが、サンパウロ在住のサッカージャーナリストから前園選手の入団時の話を聞いたことがある。
日本人関係者は出迎えたり取材に行ったりしたようだが、ブラジル人サポーターからは今回の本田フィーバーほどの熱狂的な歓迎を受けてはいないだろう。
1998年では、まだ日本はW杯にも出場したことはないし、ヨーロッパリーグで活躍した選手ではないので、いくら日本では有名選手だったとしても仕方のないことだろう。現在とは、日本のサッカー選手をめぐる状況はまったく異なっていたのだから。
さて、そんな本田圭佑を熱狂的に迎え入れるボタフォゴとは、どんなチームなのだろうか?
ブラジルには名門クラブと言われるチームがいくつかある。
サンパウロの4大クラブ、リオの4大クラブ、ベロオリゾンチの2大クラブ、ポルトアレグリの2大クラブが主なものだ。
ボタフォゴは、リオの4大クラブ(フラメンゴ、フルミネンセ、ヴァスコダガマ、そしてボタフォゴ)に含まれる。
フラメンゴは、ブラジル一のサポーター数を誇り、2019年は3冠(州選手権、全国選手権、リベルタドーレス杯)にも輝き、南米代表としてクラブW杯にも出場した人気・実力ともに不動の地位を誇るチームだ。
サポーターに庶民が多いフラメンゴに対し、上流階級のサポーターが多いのがフルミネンセだ。人気・実力ではフラメンゴに若干劣るが、フラメンゴと同様にマラカナンスタジアムをホームとし、フラメンゴの最大のライバルとして、確固たる地位を築いている。
ヴァスコダガマは、リオではフラメンゴに次ぐ人気チームだ。ヴァスコダガマという名前は、歴史上の人物であるポルトガルの探検家から来ている。ユニフォームのデザインはたすきがけで、なかなか素敵だ。
以上の3チームに比べると、ボタフォゴは少し影が薄い印象だ。
クラブの創立は1894年で4大チームの中では一番古いが、優勝回数は全国選手権が1回、州選手権が21回と、4大チームの中では一番少ない。
ホームスタジアムは、ニウトン・サントス競技場。通称エンジェニャオンだ。
このスタジアムは、2007年のパンアメリカン大会(南北アメリカの各国が参加するスポーツの大会)のために新設されたもので、2016年のリオ五輪でもサッカーや陸上競技で使用された。
2014年のブラジルW杯のメインスタジアムとして使われたマラカナンスタジアムがしばらくの間改修工事を行っていたため、マラカナンがホームのフラメンゴやフルミネンセも一時期ホームとして使っていた。
筆者も、このスタジアムでフラメンゴの試合を観戦したことがあるが、とてもきれいなスタジアムといった印象を持った。
さて、ボタフォゴの選手で、筆者がブラジルに在住していた2005〜2012年当時、真っ先に思い浮かぶのはFWのロコ・アブレゥだ。
2010〜2012年まで所属しており、当時は現役のウルグアイ代表のエースストライカー。本当によくゴールを決めていた。
あとは、GKのジェフェルソンとDFのコルテースだ。
ジェフェルソンは2009〜2018年に所属しており、ブラジル代表としても活躍した。
コルテースはボタフォゴでプレーしたのは2011年シーズンのみだが、運動量豊富な左SB(サイドバック)として活躍し、ボタフォゴでの活躍が認められ、ブラジル代表にも選ばれた。その後、アルビレックス新潟でもプレーしているので、日本人のサッカーファンにも馴染みがあるだろう。
しかし、何と言ってもボタフォゴで最大の話題を振りまいたのは、間違いなくセードルフだろう。
奥さんがブラジル人という縁で、ボタフォゴに加入した。2012年7月のことなので、私が日本に帰国した直後のことだ。
直前の2012年6月までミランで10番を付けていたスター選手であり、オランダ代表でもプレーした世界的なスーパースターがブラジルに来たのだから、その時のフィーバーぶりはすごかった。
今の本田の状況と、どうしてもイメージがかぶる。
さて、そんなボタフォゴだが、現在、リオ州選手権の真っ只中だ。
ブラジルのサッカーリーグは、1〜5月に州選手権、5〜12月に全国選手権を行い、その合間に南米王者を決めるリベルタドーレス杯などのカップ戦が行われる。
今は、各州で州選手権が行われている真っ最中なのだ。
州選手権は各州でレギュレーションは異なる。
リオ州選手権は、期間を前期・後期に分け、6チームずつの2つのグループの2位までが決勝トーナメントに進出し、準決勝・決勝を行い、前期・後期のそれぞれの優勝チームを決める。そして、その2チームが最後に、ホームアンドアウェイで戦い、優勝チームを決めるのだ。
ちょうど、前期の最終節(第6節)が2月9日(日)にあり、ボタフォゴはフルミネンセ相手の4大クラブ同士のライバル対決だったが、0−3と大敗し、決勝トーナメント進出を逃している。
また、この試合の直後、監督は解任されている。
2月12日(水)と22日(日)の2週に渡る決勝トーナメントには参加できないので、次の試合は、2月29日(土)もしくは3月1日(日)にホームで開催される後期の第1節の試合となる。
本田のプレーを見ることができるのは最短ならその試合ということになる。
しかし、その前にリオデジャネイロの街は大変な騒ぎになる。
カルナヴァウ(カーニヴァル)だ。
カルナヴァウの日程は毎年変わるのだが、今年のカルナヴァウの祝日は2月25日(火)である。
ということで、ブラジル国中の一般的なカルナヴァル期間は、2月21日(金)〜26日(水)であり、リオのサンボードロモ(サンバパレード専用スタジアム)で行われる、一般的に言われている“リオのカーニバル”は、23日(日)と24日(月)の2日間、夜から明け方にかけて行われる。
果たして、本田は、カルナヴァル真っ只中のリオをどのように過ごすのだろうか?
そして、カルナヴァル明けの週末に行われる初戦から出場することはできるのだろうか?
楽しみでもあり、不安でもある。
これからも本田とボタフォゴの動向には注目していきたい。
(文/コウトク)