パラリンピック5人制サッカー、ブラジルが5大会連続の金メダルを獲得
2021年 09月 14日
東京パラリンピックが閉幕して約1週間が経過した。一連のオリンピック・パラリンピック東京大会が終了したこととなる。
日本人にとって地元で行われる大会だったが、コロナ禍の影響で、ほとんど無観客での開催となった。
オリンピックの開幕からパラリンピックの閉幕まで約1ヶ月半。その間に、日本における新型コロナウイルスの感染状況は悪化の一途を辿っているので、無観客での開催はやむを得ない状況だった。
前回、5年前のリオデジャネイロ大会では、ブラジル開催ということもあり、様々な競技について、コラムを書かせていただいた。
元々、サッカーが中心にはなるが、スポーツ観戦は好きなので、オリンピックは昔から熱心に見ていた。しかし、パラリンピックについては、前回のリオデジャネイロ大会で初めて真剣に見た。
パラリンピックは障害者スポーツの祭典だ。障害者といっても、その障害の種類は多種多様である。
例えば、肢体障害者のスポーツは、多くが、車いすなどの機械を使う。
車いすラグビーなどを見ればわかるが、車いすごと相手にぶつかる様は、すごい迫力だし、それは障害者スポーツを見るうえでの大きな醍醐味だろう。
また、車いすを使ったトラック競技、マラソン競技などを見ると、その車いすのデザイン性からか、自転車や自動車レースのような印象を受け、これまた見応えがある。
一方で視覚障害者のスポーツは、機械を使わず生身の身体で勝負する。
陸上競技を中心に、多くの視覚障害者の競技は、ガイド役となる健常者の伴走を伴っている。
しかし、そんな視覚障害者スポーツでも異質な競技がある。
5人制サッカー(ブラインドサッカー)だ。
サッカーという激しいコンタクトスポーツを、視聴障害者がプレーする。選手は視覚障害を伴っているのだが、ガイドを伴うことなく、ピッチ内を一人で自由に駆けめぐる。これだけで奇跡のようなものだ。
使用するボールには鈴のようなものが入っており、転がるたびにシャカシャカと音が鳴る。この音と仲間たちの掛け声、そして研ぎ澄まされた自分の感覚を頼りにピッチを駆けめぐるのだ。
両足をうまく使いながらのドリブルは、小気味いいリズム感を持ち、見ている者を魅了する。
そんな5人制サッカーを、筆者は前回のリオデジャネイロ大会で初めて見たが、ブラジルは地元で圧倒的な強さを見せ、大会4連覇を飾った。
その時、特に強く印象に残った選手が、10番を背負ったヒカルジーニョだった。クラッキぶりが印象深かったこのヒカルジーニョが、前大会同様、10番を付けて出場していた。
5年の時を経て、ヒカルジーニョのプレーを見ることができたことは、大きな喜びだった。
繊細なボールタッチは変わっていない。ボールが足に吸い付いているかのようにドリブルをする。ドリブルがうまいだけでなく、ポジショニングも絶妙だ。
ところで開催国の日本は、グラインドサッカーではパラリンピック初出場を果たした。そしてブラジルと日本は同じグループに入ったため、グループリーグでブラジル対日本という、夢のような対戦カードが実現したのだ。
結果は、4-0でブラジルの勝利。世界王者のブラジルが圧巻の攻撃を見せた。エース、ヒカルジーニョも2ゴールを決める大活躍だった。
初出場の日本にとっても、世界王者と戦うことができたことは、得るものもとても大きかったことだろう。
そしてアルゼンチンとの南米対決となった決勝戦を1-0で勝利し、ブラジルは前人未踏のパラリンピック5連覇を成し遂げた。
スコアこそ1-0という最少得点だったが、内容では圧倒していた。
改めて、ブラジルがサッカー王国であることを認識させられる。
2008年の北京大会からの4大会に出場し、金メダル獲得に大きく貢献しているエース、ヒカルジーニョは現在32歳。年齢的にも、まだまだ活躍できるだろう。
今大会での彼らの活躍は、開催国の日本を含め世界中に、5人制サッカーの魅力をより多くの人に伝えたはずだ。
5人制サッカーのクラブチームは日本全国にあり、健常者も専用のゴーグルをかければ、プレーを体験することができる。
見ていてもとてもおもしろい競技だと思うが、体験すれば、その奥深さを実感することができるだろう。神経が研ぎ澄まされ、サッカーセンスを磨くうえでも、とても役に立つと思う。
今後、ますますこの競技が普及していくことを期待したい。
(文/コウトク)