ブラジルの食糧パワー~最新コーヒー事情
2015年 05月 29日「銀ブラ」の語源は「銀座でブラジルコーヒーを飲む」ことだとする俗説があるほど、日本のコーヒー文化形成にブラジルコーヒーが与えた影響は大きい。
しかし、今やブラジルは日本にとってだけでなく、世界にとって欠かせないコーヒー産地となっている。
ICO(International Coff ee Organization)発表の数字に拠ると、2012/13年のコーヒー生豆世界生産量145百万袋(1袋=60gk)の内ブラジルは35%の51百万袋を占めている。より品質が高いアラビカ種に限った場合、世界89百万袋の内、ブラジルのシェアは43%、数量で38百万袋にまで達する。
また、ブラジルは一大産地であるだけでなく、米国に次ぐ世界最大規模の国内市場も抱えている。前述のICOに拠ると、2012/13年の世界消費量142百万袋の内ブラジル市場は14%の20百袋を占める。
ブラジルのコーヒー栽培は、1727年にフランス領ギアナからポルトガル軍将校がブラジルに苗木を持ち帰ったことが始まりと言われている。
当時、その価値故に各国が国外持ち出しを禁じていたコーヒーの苗木を、同ポルトガル軍将校はフランス領ギアナ総督夫人を口説き、プレゼントとして受け取ることで見事にブラジルに持ち帰ってきたと言われており、なんとも愛の国ブラジルらしい逸話となっている。
ブラジル北部から始まったコーヒーの栽培はその後リオデジャネイロ州、サンパウロ州へと南下し、20世紀初頭には世界生産量の4分の3超を生産し、かつブラジル最大の輸出商品となる。
その後主要産地をミナスジェライス州に移したコーヒーは、鉄鉱石や石油、大豆等他の産業も発達した現代ブラジルにとっては全輸出金額の2%超を占めるに過ぎず、かつての勢いは失ったかのように見えるが、今尚農産物としては5番目に輸出金金額の大きい重要商品としてブラジル経済の一翼を担っている。
ただし、既に圧倒的地位を確立しているブラジルも、他産地と比較して、品質の向上、産業の効率化等、課題は山積みである。複雑な国内の税制度は、常に輸出業者の頭痛の種である。国内ロジスティック及び港湾整備も、喫緊の課題となっている(次ページへつづく)。
(文/山村嘉宏、記事提供/ブラジル特報(日本ブラジル中央協会)、写真/Marcos Santos/USP Imagens)