ブラジルの食糧パワー~最新コーヒー事情
2015年 05月 29日一方、品質向上を目指す動きは、近年活発化している。
ミナスジェライス州セラード地区は、地域のブランド力を高めるべく原産地呼称制度を取り入れ始めている。個々の農家もこれまでの農協頼りきりの状態から脱皮すべく、自らの顔が最終消費者にまで見えるトレース重視の商売を志向する農家も現われ始めている。
国内市場も輸出部門に劣らずブラジルにおいて重要な産業と見做されている。
近年有力メーカーによるM&Aが進んだ結果、ブラジルのコーヒー国内産業は各地域に地場メーカーが乱立していた10年前とは様変わりし、上位10社でシェア7割を超える、ナショナルブランドによる寡占化産業に変貌しつつある。
また、上位メーカーの力が強くなるにつれ商品開発力やマーケティング力も高まり、加えてブラジルの経済発展も追い風となり、コーヒーの嗜好品化も進行しつつある。
さて、そんなブラジルにとって日本は、米国、欧州に次ぐコーヒー輸出先であり、重要な消費者である。ブラジルから見ると輸出量の約7%が日本向けであり、日本からすると輸入量の30%超がブラジル産である。
また、(日本はブラジルのコーヒーにとって)開拓者でもある。20世紀初頭の日本人移民の流入とその労働力は、当時のブラジルコーヒー産業の繁栄を支え、1970年代に雹害によって大打撃を受けたパラナ州からセラード地区へ入植した多くの日系人は、同地がコーヒー主要産地へと生まれ変わる為の大きな役割を果たしている。
さらには、日本はブラジルのコーヒー文化と伝統を守る一翼も担っている。国内市場において 「Café Brasileiro(カフェ・ブラジレイロ)」というブランド名で焙煎コーヒーを展開しブラジル中の家庭に入り込んでいる「Mitsui Alimentos(ミツイ・アリメントス)」社も、インスタントコーヒーを展開している「Café Iguaçu(カフェ・イグアスー)」社も、日系企業である。
実は銀座で飲むブラジルコーヒーも、ブラジルからの単純な輸入商品ではなく、もっと深いところから日本との関係が始まっているものだと思って飲むと味が変わってくるかもしれない。
(文/山村嘉宏、記事提供/ブラジル特報(日本ブラジル中央協会)、写真/Epamig)
ミナスジェライス州はグアテマラと共同でアラビカ種のコーヒー豆の品質向上に取り組んでいる。写真はミナスジェライス州農業鉱業研究事業計画によるコーヒー栽培。グアテマラのサンカルロス大学との共同研究で行われている
※「ブラジル特報」は日本ブラジル中央協会が発行している機関紙。隔月発行、年6回、会員に無料配布される。日本ブラジル中央協会(http://nipo-brasil.org/)への問い合わせは、E-mail info@nipo-brasil.org、TEL:03-3504-3866、FAX:03-3597-8008 まで。
「ブラジル特報」2015年5月号(no.1626)目次
<あの町この町>ベロオリゾンテ[高嶋尚生] ……………… 3
<ブラジル・ナウ>サンパウロの水瓶、干上がるカンタレイラを教訓に[堀坂浩太郎] ………… 5
【特集】ブラジルの食料パワー
国際市場とブラジル農業[三石誠司] ………………… 6
【特集】ブラジルの食料パワー
最新コーヒー事情[山村嘉宏] ………………………8
【特集】ブラジルの食料パワー
最新大豆事情[富倉昌弘] ……………………………9
評伝 預言者と故郷 トミエ先生の場合[岡村 淳] …………… 10
NPO法人サンパウロ人文科学研究所日本支部発足[栗原 猛] ……… 11
連載・ブラジル現地報告
3.15 デモと表現文化の伝統 [深沢正雪]…………………… 12
(日系企業シリーズ・第 35 回)
半世紀に亘る紡績事業を振り返って[上野秀雄]…………… 13
(ビジネス法務の肝)
ブラジルでの紛争―訴訟と仲裁 [井口直樹]…………………… 14
新連載★税務の勘どころ
ブラジルへの輸入に関連した間接税の現状[エドアルド・ヴィトール/フェルナンド・マグリ] ……… 15
(連載エッセイ) ポルトガル語と私[和泉 聡] ………… 16
(ウーマン・アイ) にもかかわらず[細川多美子] ………… 17
(ジャーナリスト)勝ち組「M」の告白[名波正晴] ………… 17
(連載文化評論)カイピーラ音楽の元祖歌姫とのお別れと反政府デモ[岸和田仁] …… 18
(最近のブラジル政治経済事情)2014年のプライマリーバランス(基礎的財政収支) … 19
イベント/新刊書紹介/びっくり豆知識 …………… 20
協会からのお知らせ ……………………………… 22