取締役が平社員に扮して現場に潜入!  ブラジルでテレビ番組「お忍び上司」が話題に

2015年 12月 24日

お忍び上司

ユーリさんは勤続9年のベテラン技師。子供のころにペルーから家族で移住してきて、26年間ブラジルに住んでいる。彼の夢は子供をディズニーランドに連れて行くことだという。ユーリさんはとても親切で、<マルコス・ジュニオール>の昼食代金を払ってくれた。

リオからサンパウロに移り、マルコス・ジュニオールは検品・商品出荷の業務に就く。ここでは出荷管理の際のバーコード読み取り機の性能に問題があり、かなりの非効率が発生していた。

ここで仕事を教えてくれたエリオさんは仕事をしながら夜間大学に通って勉強をしている。一日の睡眠時間はたった4時間だが、彼の夢はこの会社で人間的に成長すること、とのことだ。仕事に対して真摯に向き合う姿にヴァウドさんは感銘を受けたという。

再びサンパウロに戻り、製品の出荷作業に回るマルコス・ジュニオール。

トラックに発電機を積み込む作業は単に製品をトラックに載せるだけでなく、輸送中製品を保護するための特殊なカバーで全体を覆うなど、かなりの重労働を伴う。4人がかりで1時間かけてようやく積み込み作業を終えることができた。

しかし、積み込みが終わって昼食を取っているとき、悪い知らせが届いた。

せっかく荷物を積み込んだトラックは別の荷物の出荷に使われることになっているから、積み込んだばかりの荷物を降ろさなくてはならないのだという。またもや連絡の不行き届きによる無駄な作業が発生した。

「伝票を書き換えればいいだけの話なのに、ただ積み荷を降ろせとだけ伝えに来るのは、積み込みを行う同僚たちに対する敬意が足りなさすぎる」とマルコス・ジュニオールに扮したヴァウドさんは怒りをあらわにする。そして最も懸念されるのは、こういった無駄によって従業員のモチベーションが下がってしまうことだと思い知った。

結局、関係部署間で話した結果、伝票を書き直すことでトラックの積み換えは回避することができた。こんな、会社にとっても誰にとっても良いことなどない無駄がまかり通ってしまう点は、取締役ヴァウドさんには早急に改善すべき点として認識された。

1週間の極秘任務を終えて、ヴァウドさんは自身の経験をこう語っている。

「この1週間は自分の認識を根本的に変えるような体験でした。素晴らしい人たちにも出会えたし、この経験は絶対に生かさなくてはならないと強く思っています」

そして現場で目の当たりにした社内の情報伝達に関する問題点と現場で働く社員たちのそれぞれの物語を取締役に報告した。

後日、イヴァニウドさん、シガーノさん、ユーリさん、エリオさんの4人はポルト・アレグリ本社内のヴァウドさんの役員個室に呼ばれた(次ページへつづく)

(文/余田庸子、写真/Reprodução/「Fantástico!」/TV Globo)
写真はTVグローボ「ファンタスチコ!」の「お忍び上司」より。TVグローボの番組はIPCTV(グローボ・インターナショナル)で放送中。視聴の問い合わせは、080-3510-0676 日本語対応ダイヤルまで