パラリンピック開会式を振りかえって

2016年 09月 13日

ミシェウ・テメル大統領 パラリンピック開会式

その後、大会委員長、国際パラリンピック協会会長、そして先日弾劾されたジウマ・ルセフ元大統領に代わり就任したばかりのテメル大統領の開会宣言が行われたが、大会委員長がブラジル政府を称える言葉を発した途端に観客からは大ブーイング、またテメル大統領の開会宣言にも大ブーイングが起こり、国民のブラジル政府に対する不信感が如実に表された。

このブーイングにもブラジル特有の感覚を感じてしまう。ブラジル人にとってもっとも馴染みのイベントは、何といってもサッカー観戦だろう。サッカー観戦では野次、ブーイングが日常茶飯事だ。そんな習慣から、オリンピックやパラリンピックといった世界中に発信される国際的な舞台でも、平気でブーイングしたりするのだと感じる。日本人なら、いくら政治不信があっても、国際的なセレモニーの席でブーイングなどしないだろう。これはいい悪いは別として、非常にブラジルらしさを感じさせるところだと思った。

その後も、パラリンピックらしく障害のある人々による感動的なパフォーマンスが次々と披露され、パラリンピック旗の入場、掲揚、そして、選手、審判、コーチ代表による宣誓が行われ、聖火リレーにより聖火がスタジアムに到着した。

この頃から、雨が急に激しくなったように感じられた。そんな中、数人の元パラリンピック選手が聖火を運んだ。雨が激しかったせいか、聖火を持ちながら倒れてしまうシーンなどもあり、会場全体がそれを包み込むような声援を送り、会場に一体感が生まれていた。そして最後には今大会にも出場する現役のパラリンピック競泳選手により、車いすでスロープを駆け上がり、聖火台に点灯された。

そして、クライマックスにはセウ・ジョルジがステージに現われた。激しい雨に当たりながら、ステージで歌う姿は、とてもかっこよく見えた。

セウ・ジョルジはブラジルの超一流ミュージシャンだが、世界的には、有名な「シティオブゴッド」や「ライフ・アクアティック」など国内外の映画に出演していることもあり、俳優としての顔のほうが有名なのかもしれない。最近では、映画「ペレ」でペレを育てた父親という重要な役を演じていたことも印象的だ。

2曲歌ったが、特に2曲目の「エ・プレシーゾ・サベール・ヴィヴェール」はブラジルの誰もが知っているポピュラーソングでもあり、選手や関係者など多くの人たちもステージ近くに集まり、踊り、歌い、非常に強い一体感を醸し出していた。そんな感動的なセウ・ジョルジのステージで、開幕式はフィナーレを迎えたのだった。

すでに大会は始まり、数々の競技が行われている。日程的には残り半分ほどになっているが、まだ1週間近くあるので、パラリンピックもオリンピックと同様に応援していきたいと思う。

(文/コウトク、写真/Beto Barata/PR)
9月7日、リオデジャネイロ、パラリンピック開会式。ミシェウ・テメル大統領による開会宣言では観衆からブーイングが起こった

12
著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

コラムの記事一覧へ