ブラインドサッカー、日本代表vsブラジル代表の国際親善試合開催

2017年 03月 22日

ブラインドサッカー

GKや監督、コーラーの指示も興味深かった。

目が見えない仲間のため、指示も具体的な角度や距離まで細かく、奥深さを感じた。もしかすると健常者によるサッカー日本代表よりも指示は工夫されているかも知れない。

また、ブラインドサッカーは音が非常に重要なため、サポーターはプレー中に声を出してはいけない。しかし、黙っているからと言って「静か」なわけではない。

健常者のサッカーの試合に無観客試合というものがあるが、盛り上がりに欠ける無機質な雰囲気の無観客試合ともまったく異なる。ピッチ上で繰り広げられる闘いや熱気がサポーターにしっかり伝わってくるのだ。

健常者のサッカーではサポーターが「声」という音で、選手がプレーで気持ちを伝えるが、ブラインドサッカーだとそれが逆になるのを感じた。

サポーターはプレー中は静かであるが、プレーが止まった時にここぞとばかりに応援する。そしてプレーが始まるとまた静かになる。

この静かになっている瞬間も、観客達が選手がやり易い環境を作ろうとする優しさである事は分かるし、思いがひしひしと伝わってくる。この雰囲気は選手と観客で作り出す、ひとつの作品なのだと思う。

「見えていなかったのは、自分なのではないか」

初観戦を終えた、筆者が感じた素直な感想である。

ブラインドサッカーのことを知らな過ぎだと怒られたら、そのとおりだと頭を下げるしかない。筆者は見えていなかったのだ。

ブラジルは2004年にブラインドサッカーがパラリンピックの正式種目になって以来4連覇中だ。つまりブラジルしか同大会で優勝した事のない、世界ランク1位の絶対王者なのだそうだ。

そんなブラジルに攻めの姿勢を貫いたものの、1-4の敗戦を喫した世界ランク7位日本代表。

東京パラリンピックまでに何を課題とするのか、差はなんなのか、きっと選手たちには、よく見えているはずだ。

ブラインドサッカー

3月25日(土)、26日(日)には富士通スタジアム川崎にて、「KPMGカップブラインドサッカークラブチーム選手権2017」が開催される。日本国内の予選を勝ち抜いたクラブチームに、ブラジル代表も参加して行われる大会である。

ブラインドサッカーを観戦したことのない方は、このスポーツが持つ息吹を、ぜひその目で…いや、全身で体感してほしい。

(写真・文/平安山良太)

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著者紹介

平安山 良太 Henzan Ryota

平安山 良太 Henzan Ryota
ライター、代理人、通訳。サンパウロ在住。

沖縄県出身。小学生よりサッカーを始めるが、 ケガにより早期挫折。高校時代より指導者の道へ。 日本で中京大学や名古屋グランパスU12でのアシスタントコーチ などを含め、幼稚園~大学生まで幅広く指導者として関わった後、 更なる成長を志し海外へ。

東南アジアのトライアジアプノンペンFC( 現カンボジアンタイガーFC)やラオス代表で研修の後、 ブラジルへ渡る。ブラジル一部リーグのアトレチコ・ パラナエンセ→SCコリンチャンス→Avai FCの下部組織にてアシスタントコーチを歴任。 アルゼンチンのリーベルプレートやペルーのアリアンサ・ リマで研修生の経験も。

2016年現在は再びコリンチャンスにお世話になっている。

公式Twitter (@HenzanRyota) https://twitter.com/ henzanryota
公式Instagram https://www.instagram.com/ ryotahenzan/
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