「カシャッサの日」の祝賀会、今年(2019年)も開催される

2019年 09月 18日

「カシャッサの日」祝賀会で開会の挨拶を述べたエドゥアルド・パエス・サボイア駐日ブラジル大使閣下(左)(撮影/カルロス藤田)

9月13日(金)、ブラジルのナショナルデーのひとつである「カシャッサの日」の祝賀会がブラジル大使公邸で開催された。

カシャッサとは、サトウキビの絞り汁を発酵した後に蒸留させて造られる蒸留酒で、ブラジルの歴史と共に育まれてきた“国民酒”で、500年以上の歴史を持つといわれている。日本での消費量は少ないが、世界ではウォッカ、ソジュ、テキーラ、ジン、ラムと並び、幅広く消費されている蒸留酒だ。

会場では各種カシャッサの試飲が行われた(撮影/カルロス藤田)

「カシャッサの日」が本国ブラジルで制定されたのは2009年のこと。近年、ブラジル国内で クラフトカシャッサ(カシャッサ・アルテザナウ) の魅力が広く見直されつつある中で、ブラジルカシャッサ研究所(IBRAC)がイニシアティヴをとって制定した。

「カシャッサの日」 は、日本でも2017年から駐日ブラジル大使館にてセレモニーが開催されている。今回の祝賀会は、カシャッサの普及を目指す2大団体である、 カシャッサ・カウンシル・ジャパン と日本カシャッサ協会の協力を得て、駐日ブラジル大使館の主催で行われた。

祝賀会は、カシャッサの普及を目指す2大団体である、 カシャッサ・カウンシル・ジャパン(右) と日本カシャッサ協会(左)の協力を得て開催された(撮影/カルロス藤田)

ブラジルで母国の食文化の再評価に尽力している料理人で、英国で毎年選出される「世界のベストレストラン」のランキング常連入賞者としても知られるアレックス・アタラ・シェフは、ビデオメッセージで祝賀会に参加して祝辞を述べた。

「 私たち(ブラジル人)は、カシャッサの文化を誇りに思っています。熟成に使われる多様な木の味からホワイトまで、カシャッサの多様性を知ることによって、これをみなさんと分かち合いたいと思います 」(アレックス・アタラ シェフ)

ビデオで祝辞を述べたアレックス・アタラ・シェフ(撮影/麻生雅人、撮影協力/Cook Japan Project)

会場では、カシャッサを輸入している主な企業が、自社が扱う自慢のカシャッサを並べて来場者に振舞い、カシャッサの魅力を伝えた。

カシャッサは、大きくわけると、工業製品と クラフトカシャッサ(カシャッサ・アルテザナウ) に区別できる。これまで日本で広く親しまれてきたのは主に、前者のカシャッサだ。

大量生産される工業製品のカシャッサは、今や世界中で人気を誇る「カイピリーニャ」をはじめカクテルのベースとして使われることでも知られている。「ベーリョ・バヘイロ」、「51」、「イピオカ」、「ピトゥ」などのブランドが有名だ。

この日も会場では、本国で圧倒的なシェアを誇る人気銘柄「ベーリョ・バヘイロ」を使ったカイピリーニャが振舞われた。

「ベーリョ・バヘイロ」のカイピリーニが振舞われた(撮影/麻生雅人)

一方、小規模な酒造家が丹精を込めて造っているのが、クラフトカシャッサ(カシャッサ・アルテザナウ)だ。

この日、クラフトカシャッサでは、「ウェーバーハウス」(リオグランヂドスウ)、「カシャーサ・ダ・キンタ」(リオデジャネイロ)、「キンタ・ダス・カスタネイラス」(ミナスジェライス)、「セレッタ」(ミナスジェライス)、「ファゼンダ・ソレダージ」(リオデジャネイロ)、 「ボアジーニャ」(ミナスジェライス)の6銘柄が紹介された。

ミナスジェライス州北東部のサリーナスで造られる「セレッタ」と「ボアジーニャ」.
「セレッタ」はウンブラーナ(アンブラーナ)、「ボアジーニャ」はバウサモの木の樽で熟成されている(撮影/麻生雅人)

「クラフトカシャッサ はブラジル各地で造られてはいますが、原料となるサトウキビの品種や、土壌や気候を含む 育った環境、サトウキビの搾汁時の手間暇にかけ方、発酵時の酵母の種類、蒸留器の仕様などの違えば、出来上がるお酒が持つ個性もまったく異なります」(カシャッサ・カウンシル・ジャパン 麻生雅人 主任研究員)

本国ではグルメレストランやバールなどで、ストレートで、ワインやブランデーのようにアロマや色、蔵元ごとに異なるお酒の個性の違いなどを楽しみながら、“ご当地クラフトカシャッサ”が味わわれているという。

ミナスジェライス州南部のカマンドゥカイアで造られる「キンタ・ダ・ス・カスタネイラス」。熟成に使われる木はジェキチバ、アンブラーナ(撮影/麻生雅人)

また、カシャッサには、蒸留後に休ませたのち、そのまま瓶詰される、ブランカ(ホワイト)やプーラ(ピュア)などと呼ばれるクリアなタイプと、これを木の樽で寝かせた熟成タイプとがある。

「カシャッサを熟成させる樽には、ウィスキーやワインでよく使われるオークのほかに、ジェキチバ、アンブラーナ、イペー、パウ・ブラジルなどブラジル原産の樹木を含む30種類以上の木が使われています。樽に使われた木の種類によって味や色、香りが異なるため、実に個性豊かなカシャッサが国中でつくられています」( カシャッサ・カウンシル・ジャパン 麻生雅人 主任研究員 )

例えばパウ・ブラジルは、16世紀半ばにポルトガル人がはじめて南米大陸に上陸して間もないころに出会った木で、ブラジルという国名の由来になった木だ。イペーもブラジルの大西洋岸森林原産の樹木で、この木の花は、国のシンボルの花として親しまれている。

右がリオデジャネイロ州北部のノヴァ・フリブルゴで造られる「ファゼンダ・ソレダージ」。熟成に使われる木はジェキチバ、イペー、パウ・ブラジル。左は「ベーリョ・バヘイロ」のノーマルタイプと、オークの木の樽ね熟成させたタイプ(撮影/麻生雅人)

「こうした、ブラジル原産の木を使った木の樽で熟成させたカシャッサは、他の国のお酒にはない、ブラジル独特の味や香りを持っています。原料のサトウキビ、発酵時に使われる天然酵母や糖度調整のための綺麗な水、熟成時の木の樽まで、クラフトカシャッサはブラジルの広大な大地が育んだ豊かな自然の恵みを受けて造られた、いわば“自然派スピリッツ”です」 (同)

リオデジャネイロ州北部のカルモで造られる「カシャーサ・ダ・キンタ」。熟成の樽にはオーク、アンブラーナが使われている(撮影/麻生雅人)

中には、一度、ひとつの種類の木の樽で寝かせた後に、異なる木の樽で熟成をさせて、樽の影響をブレンドさせたカシャッサもある。

「あるいは、数種類の木を混ぜて使った樽で熟成させることで、複雑でミステリアスな味と香りを作りあげるという作り方もあります。さまざまな木の影響を“ミックス”させた“多様性”を楽しむという点では、カシャッサの楽しみ方は、混交文化を背景に持つブラジルらしい文化といえます」 (同)

リオグランジドスウ州イヴォッチで造られる「ウェーバーハウス」「プレミアム・ブラック」はバウサモ、「プレミアム・ゴールド オーガニック」はフレンチオーク、「セッチ・マデイラス」はフレンチオーク、アメリカンオーク、バウサモ、カネーラササフラス、アンブラーナ、グラピア、カブリウーヴァの7つの木が、熟成の樽に使われている(撮影/麻生雅人)

カクテル・カウンターでは「セレッタ」を使ったカイピリーニャが提供されたほか、カシャッサの歴史や製法についてのセミナー、カシャッサに関する写真展、 「C1グランプリ(カシャッサ・カクテル・グランプリ)2019」表彰式も行われた。

セミナーではカシャッサの歴史うや製法、楽しみ方などがレクチャーされた(撮影/カルロス藤田)
蒸留所の風景や、熟成樽のある蔵など、カシャッサの文化を紹介するブラジル各地のカシャッサの生産地の写真が展示された(撮影/カルロス藤田)

バンケットルームでは、カシャッサのペアリングに相性のいい食べ物として、ミナスチーズやアマゾン野生種のカカオを使ったチョコレート、クプアスのドライフルーツが紹介されたほか、ブラジルプヂン研究家の中津雄春の協力のもと、カシャッサを使ったブラジルプヂンの試食も行われた。

クプアスのドライフルーツや、カカオニブのカシャッサ&シロップ漬けなどが紹介された(撮影/カルロス藤田)

(文/カルロス藤田)