映画「汚れた心」上映会に主演の伊原剛志さんが来場

2022年 11月 30日

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映画「汚れた心」上映会で撮影時のエピソードを語る伊原剛志さん(撮影/麻生雅人)

11月28日(月)、駐日ブラジル大使館では、ブラジル独立200周年記念行事の一環として、ブラジル映画「汚れた心」の上映会を開催した。上映会には、主演を務めた日本人俳優の伊原剛志さんも来場して、撮影時の思い出や裏話を披露した。

映画『汚れた心』(2012年日本公開)は、第二次世界大戦終戦間もないころ、ブラジルの日系人社会で起きた臣道連盟(しんどうれんめい)事件を題材にした物語。伊原さんは、日本が戦争に勝利したと信じる“勝ち組”の一人だったが、組織が行っていることや自身の行動に疑問を持ち始め、苦悩することになる人物を演じた。

上映に先駆け、オタヴィオ・コルテス駐日ブラジル大使閣下がスピーチを行った。

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オタヴィオ・コルテス駐日ブラジル大使閣下(撮影/麻生雅人)

「この度は映画『汚れた心』の上映会に、主人公である写真館店主の高橋という人物を演じた俳優の伊原剛志さまにも来場いただき、大変嬉しく思います」(オタヴィオ・コルテス駐日ブラジル大使閣下)

「『汚れた心』は、フェルナンド・モライスの同名の著作を基に、映画監督のヴィセンチ・アモリンが映画化した作品。製作には大勢のブラジル人と日本人が関わりました。そこで生まれた友好関係は今日まで育まれ続け、2021年には再びヴィセンチ・アモリン監督と伊原剛志さんがタッグを組み、『ヤクザプリンセス』という作品で大画面に戻ってきました」(同)

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映画「ヤクザ・プリンセス」(2021年)(写真/Divulgação)

「『汚れた心』は、日本とブラジルに関するあまり知られていない、しかし重要な歴史を扱った物語です。登場人物の髙橋は、伊原さんの素晴らしい演技を通して、臣道連盟(しんどうれんめい)が活動してい頃の日系社会の様子を伝えています」(同)

「いわゆる“勝ち組と負け組”についてのエピソードは、日系ブラジル人作家オスカール・ナカザトの著作『ニホンジン』でも描かれています。本書は、水声社と駐日ブラジル大使館の取り組みにより今年、日本語版も刊行されました」(同)

「今年ブラジルは独立200周年を迎えました。我が国は歴史を通じ、地球上のあらゆる地域から移民を受け入れ、彼らの習慣、思想、文化表現を吸収してきました。私たちの国民のアイデンティティは、先住民の面影のみならず、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、中東の面影もあることを胸を張って言うことができます。この過程における日本の貢献については議論の余地がありません」(同)

「現在ブラジルには約200万人の日系ブラジル人が暮らしており、経済、政治、芸術、学術まで様々な分野で活躍しています。日本で独立200周年を祝うということは、日本からの影響を祝うということでもあるのです」(同)

大使閣下のスピーチに続き、伊原剛志さんが撮影の思い出について話した。

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撮影時のエピソードを語る伊原剛志さん(撮影/麻生雅人)

「この映画は11年前に公開された作品で、撮影はその1年前、サンパウロ市から車で2時間ちょっとのところにあるカンピーナスで、2か月に渡って行われました。カンピーナスはすごく風景が良く、本当に空が見たことのないブルーで、木が本当に深い緑で、大地は赤く、綿花の畑の白が黄金色に輝いていました。2か月間ブラジルに居て、私だけでなく日本から参加したメインの5人の役者が全員、カンピーナス、ブラジルで、ものすごくエネルギーを貰って帰ってきました」(伊原剛志さん)

「制作の過程でヴィセンチ・アモリン監督は日本と日本人をとてもリスペクトしてくれました。(ブラジルで生まれ育った)日系ブラジル人の方もたくさん出ていらっしゃるんですが、大人の(俳優の)芝居では、日本語がちょっと違ったりするところを、奥田瑛二さんがずっと監督の後ろにいてチェックして、監督が芝居のOKを出しても、振り返って奥田さんが言葉でOKを出さないとOKじゃないんです。子どもの(俳優の)演技の時は僕が同じことをやって、監督が僕を振り返って『大丈夫?』と確認して、僕が『大丈夫』というとOKになりました。美術の部分も奥田さんがチェックを入れていました」(同)

「私はこの撮影でブラジルが好きになり、もう4回行っています。素晴らしい映画監督であるヴィセンチ監督と友達になれたこと、日本から一番遠いブラジルと自分がつながったことに、すごく感謝しています」(同)

(文/麻生雅人)