「ヨコハマ・フットボール映画祭2023」、6月17日(土)から開幕。サッカーに人生を翻弄された親子3代の絆の物語「バック・トゥ・マラカナン」も日本初公開

2023年 06月 14日

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「ヨコハマ・フットボール映画祭2023」で公開される映画「バック・トゥ・マラカナン」(画像提供「ヨコハマ・フットボール映画祭2023」)

6月17日(土)~‎18日(日)、「ヨコハマ・フットボール映画祭2023」が開催される。サッカーを題材にした世界各国の映画7作品が上映されるほか、元国際審判員の家本政明氏を迎えてのレフリーをテーマにしたトークショーなど、各種イベントが開催される。

「ヨコハマ・フットボール映画祭2023」では、この映画祭のために買い付けられた、日本初公開となる新作映画が紹介される。ブラジルを舞台にした、ブラジル/イスラエル/ドイツの合作映画「バック・トゥ・マラカナン」も上映される。

主人公のロベルトは、妻に離婚され、養育費の支払いもままならず父親の家に居候をしている40歳のサエない男。

父サミュエルは、ブラジルで経済危機があった時代にイスラエルへ移住してきた移民。サッカーへの想いは特別だ。

12歳になる、ロベルトの息子イタイは、今は母親(ロベルトの元妻)の下で暮らしている。

「バック・トゥ・マラカナン」はひとことで言えば、そんな、イスラエルで暮らすブラジル系移民の3代にわたる父と子の物語だが、彼らが互いの絆を再確認していく過程と、彼らの人生をいかにサッカーが翻弄して来たかが解き明かされていく過程とが、同時進行で語られていく、という構造になっている。

“サッカーが人生そのもの”だという人間が決してサミュエルだけのことではなく多くの国民にとっても言える国である、ブラジルらしいお話だ。

物語の舞台は、W杯ブラジル大会が開催された2014年。重い病を抱え、準決勝の日に手術を受けなければならないことを知ったサミュエルには、この年は、どうしても故郷ブラジルでW杯を観戦しなければならない理由があった。

サミュエルにとってサッカーが人生そのものである理由や、彼を翻弄した運命は、物語が進むにつれて次第に明かされていく。

本人(サミュエル)すら知らなかった、自身の運命を翻弄した出来事を知った時、サミュエル、ロベルト、イタイは何を想うのか? 3人の絆の行方は?

サッカーのことを全く知らない人が見ても胸を打たれる家族についての映画ではあるが、マラカナン・スタジアムで行われた決勝戦でウルグアイにまさかの敗北を喫し、初の母国開催での大会での優勝を逃した1950年のW杯、通称“”マラカナッソ”についてだけ、前もって知っておけば、より深く彼ら親子の想いが伝わるのではないかと思う(この映画のタイトルの意味深さも含めて)。

「バック・トゥ・マラカナン」の上映は6月18日(日)13:50~16:00 かなっくホールにて。また、6月20日(火) 20:00からシネマ・ジャック&ベティにて追っかけ上映も行われる。

また本映画祭では、男女間の待遇格差解消(イコールペイ)の実現のために立ち上がったアメリカ女子サッカー代表たちを描いた「LFG モノ言うチャンピオンたち」(アメリカ合衆国)、生きる伝説イブラヒモビッチの誕生秘話「I AM ZLATAN ズラタン・イブラヒモビッチ」(スウェーデン)、横浜F・マリノス クラブ創設30周年記念ドキュメンタリー「Beyond Together」(日本)、精神が衰弱した母親と二人暮らしで、仕事をしながらプロサッカー選手を目指す17歳の少年が、都会のクラブからのスカウトにより、夢を追うか母を取るかの決断をつきつけられる「ある日突然に」(イタリア)、心理学、統計学、物理学を駆使しつつ、数々の証言を交え、往年のPK戦を徹底分析する“PK”に関するドキュメンタリー「ザ・ロングウォーク
 トラウマと贖罪」(イングランド)が上映される。また、生まれつきの聴覚障害のプロボクサーを岸井ゆきのが演じた、三宅唱監督作品「ケイコ 目を澄ませて」も特別上映される。

詳細は「ヨコハマ・フットボール映画祭2023」公式HP(https://yfff.org/yfff2023/)を参照。

(文/麻生雅人)