パリ・サン=ジェルマン ジャパンツアー2023 最終戦。PSG、インテルの高速カウンター2発に沈む。ネイマールはプレーせず日本を去る

2023年 08月 4日

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8月1日(火)、国立競技場。パリ・サン=ジェルマン対インテル・ミラノ(撮影/コウトク)

試合は、最初のプレーでPSGがファビアン・ルイスからの素晴らしい縦パスが入りいきなりチャンスを作った。

このプレーを見て、この試合は前2試合とは違うものになるという期待を持った。

その直後インテルのカウンター攻撃が見られたが、徐々にPSGが試合のペースを握るようになる。PSGが支配し、インテルはカウンター狙いという図式となった。

PSGは、前2試合よりよく組み立てられていると感じた。

中盤中央の3枚にファビアン・ルイスとウガルテ、そして第2戦で記者へのインタビューに応じてくれたザイール・エメリーが入っており、パス交換なども繰り返し、三者三様で見応えあるプレーを見せてくれた。

しかし、堅守を誇るインテルの堅い守りを崩し切ることはできず、ゴールは決まらず前半は0-0で終えた。ベンチに引き上げるときに、ファビアン・ルイスがドンナルンマと真剣に話し込んでいる姿が印象的だった。

後半開始からのメンバー交代はなかった。前半のメンバーでの攻撃を引き続いて見ることができることに安堵した。

後半立ち上がりはインテルが積極的な入りを見せる。大きなチャンスを迎えるも、その後は両チーム一進一退の攻防が続いた。

そんな中、後半19分、PSGに待望のゴールが決まった。この日2列目右の位置でプレーしたヴィティーニャが目の覚めるようなミドルシュートを決めたのだ。

ヴィティーニャは第2戦に続いて今ツアー2ゴール目。定位置はボランチだが、この日は右のウイングに近い位置でSBのハキミのオーバーラップを考慮して中に切れ込んだいい動きを見せていた。小柄な体で細かいテクニックを駆使する動きを見せてくれた。

後半途中から両チームでメンバーチェンジを繰り返した。注目のファビアン・ルイスは後半25分に、ウガルテは後半35分に交代した。

この2人のプレーはよかったと思う。それぞれ特徴を活かし、小気味よい動きで多くのチャンスをつくり出していた。特にファビアン・ルイスはシュートこそ1本に終わったが高い技術力を見せてくれた。できることならゴールを決めてほしかった。

しかし、この日の主役はPSGではなかった。

インテルも果敢にメンバーチェンジを繰り返し、トゥラムを後半10分に、エースのラウトロ・マルティネスを後半32分に交代で下げた。

そんなエースの交代の直後、これぞインテルといった鋭いカウンター攻撃を見せたのだ。

ラウタロ・マルティネスに代わり入ったセバスティアーノ・エスポジート(イタリア)が入った直後に高速カウンターからゴールを決めた。

そして、その2分後、またも電光石火の如く、エスポジートと同じタイミングで入ったステファノ・センシ(イタリア)が高速カウンターからゴールを決めたのだ。

まさにインテルの天下の宝刀ともいえる鮮やかなカウンター攻撃だった。

残り時間は10分になった。

前日練習でネイマールが練習に参加したことにより、この日スタジアムを訪れた観客はネイマールのプレーを期待した。

スタンドから何度となくネイマールコールが聞かれた。

この日はネイマールもリラックスしていたのか、大型ビジョンに映る姿はやわらかい表情で笑顔を浮かべていた。

しかし、そんな観客の希望は最後まで叶えられず、ネイマールは最後までプレーすることはなかった。

そのまま2-1で試合は終了。インテルの勝利で試合は終わった。

試合終了後、スタンド前では、インテルのインザーギ監督のインタビューが行われ、ピッチ上では、ネイマールがこの日出場がなかったチームメイト数人とクールダウンのため軽くランニングを行っていた。

ミックスゾーンでは、PSGのリュカ・エルナンデスが記者からのインタビューに応じてくれた。内容は以下の通り。

――今日の試合はどうでしたか?満足してますか?

「7か月間故障していたので、ピッチに戻ってこれてよかったと思っている。100%のコンディションに備えようと思っている」

――今回のジャパンツアーはどうでしたか?楽しかったですか?

「すごく満足している。すごくハッピーだと思っている。素晴らしいおもてなしをしてもらったし、日本の文化、日本の人々の考え方をいいなあと思っている。そんな日本でプレーする姿を見せることができてとても嬉しい。また早く日本に戻ってきたい」

――今季からリーグアンでプレーすることについて、どう思っていますか?

「リーグアンでは初めてプレーするので、新しい挑戦だ。リーグが始まるまでの約1週間、しっかりと備えていきたい」

――新しい監督になってチームはどうですか?今回、試合では勝てなかったが、よい準備が出来ていると思いますか?

「たくさんの新しい選手が入っており、監督に指導されたことをしっかりやって、今日の試合でも前半、後半うまくいっているところもあったと思う。しかしサッカーは勝つことが大事。今、よい方向性を持ってやっていると思う」

両チームともに試合後の監督会見は行われなかったが、両監督のフラッシュインタビューによるコメントが入ってきた。

内容は以下の通り。

PSG ルイス・エンリケ監督 

――難しい試合だったが、どう振り返るか?

「とても良い印象の試合だと感じています。チームのコンディションもよかったですし、⾼いインテンシティでプレーができたので、私共としては素晴らしい試合ができたと感じています」

――⽇本のファンの声援はどのように感じましたか?

「⽇本のファンのことは誇りに思っています。PSG のことを愛してくれていますし、PSG の サッカーを愛してくれているので、私たちを⽀えてくれたことを誇りに思っています」

――来シーズンの⽬標は?

「リーグ序盤から良いスタートを切れるように、チームの⽬標を定めてメンバー構成を考え ていきたいと思っています」

――ファンへの⼀⾔

「たくさんの声援を本当にありがとうございました。引き続きよろしくお願いします」

インテル シモーネ・インザーギ監督

――勝利したが、どんな思いか?

「とても嬉しいです。ここ何試合でとても重要に感じていたので勝つことができてとても嬉 しいです。ただ、まだ 3 週間チャンピオンズリーグまでは時間があるので、⾊々改善しなが らやっていけたらいいと思っています」

――どんなテーマで今回の試合に臨んだのか?

「パリ・サン=ジェルマンはとても強いチームですので、最初の⽅は少し難しかったですが、そ のあとは改善してプレーが良くなりました。みんなとてもよかったです」

――かなり⾼い強度でポテンシャルを⾼めていると聞いているが、どうだったか?

「⼤阪でも東京でも、いいトレーニング構成を組み、とても良いトレーニングができましたプレーに関しても少し改善すべきところもありましたが、最後まで全員がハードワークしてできてよかったと思います」

――ファンに向けて⼀⾔

「⽇本のファンのみなさま、本当にありがとうございます。今⽇もたくさんのインテリスタが スタジアムに⾜を運んでくれて、本当にありがたく思っています。来シーズンに向けたいい準備ができて⾮常に満⾜しております」

さて、これで1週間にわたるPSGのジャパンツアーが終わったが、この試合、そして3試合を通したツアー全体について振り返ってみたい。このツアーをどう評価すればよいのだろうか? 非常に難しい。

正直、この3試合目の試合は前2試合よりも見応えある攻撃を見せてくれたと思う。個人的には、満足できた部分もあった。

しかし、ヴィティーニャの1ゴールに終わり、結果としても2-1で負けている。この日スタジアムを訪れた人たちにとって、PSGの攻撃力よりもインテルの鮮やかなカウンターのほうがずっと印象に残ったことだろう。

そして、何よりメンバーである。プレーした選手たちは十分に世界的なプレーヤーたちだ。

しかしながら、昨年はメッシ、エムバぺ、ネイマールの世界のビッグ3に加え、セルヒオ・ラモスもマルキーニョスもいて、これらの5人が同時にプレーしている。

それに比べて今年は、メッシは早々にメジャーリーグサッカー(アメリカ)へ移籍してしまい来日しないことはわかっていたが、エムバぺ、ネイマールは大々的にプロモーションされていた。多くの日本のサッカーファンにとって、この2人のプレーを見ることが最大の関心だったことだろう。

しかし、来日直前に、エムバぺは移籍騒動で来日メンバーから外れ、ネイマールは来日したもののまったくプレーしなかった。

そうはいっても、素晴らしい選手たちが揃っているので、圧倒的な強さで勝つ姿を見せてくれれば少しは満足感を得られたかもしれないが、結果は1分け2敗と未勝利に終わってしまった。

昨年を知っている人からすると、今年のツアーは何だったのか、というのが正直なところだろう。

同時期に来日したバイエルンのトゥヘル監督は、試合後の会見を行い、自身の口からいろいろなことを語ってくれた。PSGのジャパンツアーでは、そういう契約になっていたのかもしれないが、試合後の会見を行ったのは、セレッソ大阪の小菊監督だけだった。

残念な面が多かったことも否めない。今回のPSGのジャパンツアーは、チケットの価格設定も含め、世界的なビッグクラブにとって、今後の日本ツアーのあり方について一石を投じることになっただろう。

そんなことを思いながら、筆を置こうとしたら、驚くようなニュースが入ってきた。

何と、この試合の2日後に韓国で行われたPSGの試合で、なんとネイマールが先発出場し90分間プレーしたというのだ。

これにはショックを受けないわけにはいかない。3試合もあった日本ではまったくプレーせず、1試合しか行わない韓国でフル出場しゴールまで決めたというのだ。

怪我の状態から、調整がジャパンツアーには間に合わずリーグアン開幕前の最後の試合にギリギリ間に合ったというのであれば、それは仕方のないことだ。しかし、なんとなくモヤモヤした気持ちになってしまうのは私だけではないはずだ。

ジャパンツアーでは残念な面もあったが、新しいPSGがこの先どのように今シーズン戦っていくのか、注目していきたいと思う。

(文/コウトク)

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著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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