プリンと、プヂン、プジンの違いとは?
2023年 11月 11日日本でグラフィックデザイナーとして活躍する傍ら、大泉町観光協会の理事を務めるブラジル・サンパウロ生まれの平野勇パウロさんは、「どうして日本で販売されるブラジルのプリンは、いつもココアスポンジの上に乗っているのですか? とても不思議です」といぶかしがる。
昨年(2022年)末頃からメディアでたびたび取り上げられるようになり、じわじわと話題になってきたブラジルプリン。プヂン、プジンとも記される。
今年(2023年)6月にZ総研が公表した、Z世代12万人への独自アンケート調査に基づく「ネクストトレンド予想」でも、「プヂン」のワードが2位にランクインしていた。
ブラジルプリンの波はスイーツ業界にも押し寄せ、7月1日にはモンテールが「ブラジルプヂン」を期間限定で全国のスーパーなどで発売。11月7日にはセブン&アイ・ホールディングスが「ブラジルプリン」を“THE SEVEN SWEETS”のラインナップで発売した。
日系3世の平野さんが不思議がるのは、セブン&アイ・ホールディングスやモンテールから発売されたブラジルプリンは、どちらも、プリンと、ココアスポンジとで2層になっているからだ。
この謎を紐解く前に、ブラジルのプリンについての予備知識を記しておこう。
日本でブラジルのプリンが語られる際に少々ややこしいのは、製品の名前がプリンだったりプヂン、またはプジンと記されている点だ。
ネット上でも、プリンとプヂン、プジンとを区別して紹介している記述も見られるが、「おいしいブラジル」などの著書もあるブラジル食文化研究家の麻生雅人(「Mega Brasil編集長」)によると、これらはすべて発音や表記の仕方が異なるだけで、すべて日本で言うプリンのことだと語る。
「プリンは、Puding(プディンまたはプディング)の日本で一般的な呼び方ですが、公用語がポルトガル語であるブラジルではPudimになり、発音はプジンに近いので、日本ではブラジルのプリンをプヂンまたはプジンと表記することがあります」(麻生雅人・Mega Brasil編集長)
つまりプリンもプヂンもプジンも、表記が異なるだけですべて同じプリンというわけだ。
「日本で注目を集めて以降、ブラジルのプリンを語る際にプヂンまたはプジンと表記すればブラジルのプリンを指すことができるため、この表記が広く使われているのだと思われます」(同)
ブラジルのプリンが注目を集めている最も大きな理由は、日本の一般的なプリンと異なり、練乳(コンデンスミルク)を使用しているという特徴にあるようだ。もっちりした食感と独特の甘みが人気を呼んでいる。
「ブラジルではプリンに練乳を使うことが一般的で、国民的に愛されているレシピです。現在ではブラジルのプリンの大きな特徴だと言えます。しかし厳密に言えば、“ブラジルのプリン=練乳を使ったプリン”とは言いきることはできません」(同)
ブラジルでプリンに練乳が広く使われるようになったのは、1960年代以降のことだと考えられているという。
「ブラジルにプリンはが伝わったのは植民地時代、ポルトガルから伝わったと考えられています。19世紀の記録では牛乳または生クリームが使われています。確かに現在のブラジルでは練乳を使うレシピが一般的ではありますが、今でも、牛乳や生クリームで昔ながらの作り方をするプリンもあります」(同)
日本では、この練乳を使ったプリンが人気を呼んでいるわけなので、“ブラジルプリン”、“プヂン”または“プジン”と書かれているものは、練乳を使ったブラジルのプリンを指していると考えて間違いはなかろう。
(次ページへつづく)