プリンと、プヂン、プジンの違いとは? 

2023年 11月 11日

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2023年4月12日~14日 東京ビッグサイト 東ホールで開催された「ワイン & グルメ ジャパン2023」。ブラジルパビリオンでは、ブラジル製のプリン専用の焼き型を紹介した(撮影/麻生雅人)

さて、練乳を使うレシピのほかにも、ブラジルのプリンと日本のプリンとでは異なる点がいくつかあるという。

「日本ではプリンは一人前用のカップで作られることが多いのに対し、ブラジルではホールで作り、切り分けて食べるのが一般的です。プリンを湯煎する際に使われる専用の型もあります」(同)

ブラジルのガストロノミー界を代表するシェフの一人であるパウロ・マシャード・シェフも、ブラジルのプリンは材料を「真ん中に突起のある専用の型に流し込んで、湯煎で蒸し焼きにする方法が代表的」だと語る。

そのためホールで焼き上げた際、中央が円形にくりぬかれた形になる。2022年にブラジル政府のミッションで日本に派遣されたパウロ・マシャード・シェフが日本で紹介したのも、この専用型を使って焼いたプリンだった。

また、パン屋やレストランで出されるプリンは、スクエア型のベーキングトレイで焼かれることも多い。この場合も、提供される際には、一人前サイズに切り分けられる。

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シュラスコレストラン「バルバッコア」では2023年から、デザートビュッフェで人気のプヂンのテイクアウトを始めた。店舗によってプヂンの形は異なり、写真のようなサークル型のホール型、スクエア型のベーキングトレイ型もある(画像提供/ワンダーテーブル)

しかし、チョコレートケーキのスポンジには乗っていない。見た目は我々が知る、一般的なプリンだ。

有名なブラジル流のグリル肉料理シュハスコ(シュラスコ)のレストランでも、デザートビュッフェにプリンは欠かせないアイテムだが、「バルバッコア」、「バッカーナ」、「キボン」など、どのシュハスコ店でも、プリンはスポンジには乗っていない。

日本でブラジルのプリンが、チョコレート味のスポンジに乗せて提供されている理由は、昨年末頃からブラジルのプリンが広く注目されるきっかけとなったのが、たまたまこの形態の製品だったためではないか、と考えられるという。

「清澄白河のカフェなどで提供されている『中津さんのブラジルプヂン』が、チョコレートスポンジの上にプリンが乗ったスタイルだったため、SNSなどで画像と共に拡散される中で、この形態がブラジルのプリンの形として広まったのではないかと考えられます」(麻生雅人・Mega Brasil編集長)

クックパッドニュースの取材で駐日ブラジル連邦共和国大使館の広報部長セーザ・イップ氏も、ブラジルのプリンについて「各家庭に受け継がれるレシピがあり、母親や祖母の味として食べられているんです。家庭や地域によって入れるものが違い、オレンジやマンジョッカ(キャッサバ芋のこと)が入っていたり、北のほうではクプアス(カカオの仲間のフルーツ)を入れたりします。下にスポンジを敷いて2層にしているアレンジもありますね」と、あくまでスポンジの乗っているスタイルは、数あるプリンの形の中の一つであると述べている。

そしてなにより、上記のカフェでおなじみの『中津さんのブラジルプヂン』のレシピ提供を行っているブラジルプヂン研究家の中津雄春さん自らも、自身が提供しているレシピは、数ある作り方の一つであると語る。

「僕がカフェなどにレシピを提供しているのは、プリンケーキ(Bolo de Pudim)という種類。ココアスポンジケーキの上に濃厚なプリンが乗った二層のケーキです」(中津雄春さん)

しかしこの“中津さんのブラジルプヂン”が注目を集める中で、このプリンのレシピがブラジルプリンとして広まった結果、製品化される際もこの形が踏襲されているということのようだ。

「プリンとスポンジケーキが2層になったプリンのケーキも確かによく作られる形の一つです。ケーキの部分は、チョコレート味だけでなく、ジェノワーズなど卵味、オレンジ味、ニンジン味などもおなじみです」(麻生雅人・Mega Brasil編集長)

たまたま日本では、ココアスポンジに乗った形がポピュラーになりつつあるが、これもまたブラジルのプリンの楽しみ方として、おなじみの形のひとつであることは間違いない。ぜひ、ココア味だけでなくオレンジ味など他のフレイバーのスポンジに乗った形も発売してほしい。

なにはともあれ、昨年末に、2023年のトレンドになるかも? と話題になったプヂン、またはプジンことブラジルプリン。今また、2024年のトレンドになるかも?と言われ始めている。果たして来年こそ、日本で流行るか、ブラジルプリン!?

(加藤元庸)

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