万博ブラジル館は、日伯両国の友好関係と、気候変動など環境問題へのブラジルの取り組みをアピール
2024年 02月 5日
2月1日(木)、駐日ブラジル大使館で、来日していたブラジル輸出投資振興庁(ApexBrasil)のジョルジェ・ネイ・ヴィアナ庁長、マリア・ルイザ・クラヴォ大阪万博ブラジル総局長による記者会見が行われた。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。会見を始める前にまず日本の皆様に、年始早々に起きました能登半島の震災、その後の余震による災害がある状況におきまして、ブラジルとしては、深くお見舞いを申し上げたいと心からお伝えしたいと思います」(ジョルジェ・ネイ・ヴィアナ庁長)
続いてジョルジェ庁長は、EXPO 2025 大阪・関西万博が開催される2024年が、ブラジルと日本にとって外交関係樹立130周年に当たるメモリアルイヤーであり、その中でパビリオンを出展する意義について語った。
「来年、両国は外交関係樹立130周年を迎えます。その中での万博への出展が行われることになります。私たちには今回の出展が、長きに渡る2国間の伝統的な関係性に見合ったものになるようにというミッションが与えられています」(同)
「日本から多くの移民がブラジルに渡って以来、両国には人的交流の長い歴史があります。そしてブラジルには、最大となる在外の日系社会があります。日本におけるこの万博のブラジル館が、そのような関係性に見合ったものになるよう、私たちは取り組んでいきたいと思っています」(同)
ブラジルは当初、「タイプA」と呼ばれる自国でのパビリオンの建築を予定していたが、博覧会協会が提案する、日本側が建てて、建設費を参加国が負担する「タイプX」への変更を決定している。会見では記者団から、パビリオンの変更のいきさつや、想定しているパビリオンの姿に関する話題が相次いだ。
「皆さんがおっしゃるように、当初予定していたタイプから、『X』と呼ばれるタイプに移行したわけですが、移行を決定した要因はいくつかあります。最も大きな理由は時間の制約でした。限られた時間の中で建設を完了することが危ぶまれたため、リスクを感じる状況にありましたので、より確実に期間内に完了できるタイプに移行したということです」(同)
「ブラジル側としては、(自国での建設を行う場合)ブラジル政府の名前で、どこかの場所になんらかの建設を行う場合には、数多くのさまざまな規則があります。それらのルールをすべて承認しなければ建設することができません。時間的な制約に限界を感じたため、『タイプX』への移行を決定しました」(同)
「パビリオン建築のために国際的な入札を行い、落札したのがブラジルの業者だったのですが、海外での建設経験のあまりない業者だったこともあり、日本とブラジルの物理的な距離も考慮に入れ、期限内の建築が果たして実行されるのか不安な面がありました。一方、日本側から提示された『タイプX』は日本側が万博のために依頼している企業が建設にあたるということで、そちらのほうが安心できると判断した経緯があります」(同)
ブラジルは『タイプX』のパビリオンの完成および引き渡し予定日を1か月早めてもらえるよう日本側に要請し、その要請は受け入れられたとのこと。
「『タイプX』は、建設としては日本側が建設するため、私たちは、出展に向けてコンセプトに注力することになります。当初のコンセプトからは変更が生じますが、大きく変わるわけではありません、物理的なスペースに適応させて変更を行う必要があります」(同)
ジョルジェ庁長は、日本側が建設する「タイプX」であっても、明確なコンセプトを持ってカスタマイズすることで、来場者を驚かせるようなパビリオンの建設を目指していると強調した。
「私たちに課せられているのは、チャレンジです。現在、来場者にとって驚きとなるような体験をしていただきたい、というコンセプトを練っているところですが、工期も空間も縮小されている中で、いかにブラジルが持つ才能を生かして、コンセプトを実現できるかというチャレンジです。以前予定していたものを超えるような、来場者に『タイプX』であることを感じさせないようなパビリオンの実現に取り組んでいきたいと思います」(同)
「ドバイの万国博覧会でのブラジル館の来場数は上位5位と発表されていますが、同じように大阪万博において、ランキング上位の来場者数が誇れるようなパビリオンづくりに取り組んでまいります」(同)
「パビリオンの敷地には、2つのボックスが建築されます。各々が500m2のボックスで、それらは互いに関係性を持っています。どちらも、外側も内側も、見た目にもインパクトのあるような形でカスタマイズをするよう工夫していきます」(同)
パビリオンでは、美食、自然や生物多様性、ブラジリアンスタイルなど、ブラジルが持つ強みをアピールしていく予定とのこと。
「特に食に関しては、今の時点では必ずこれを出しますという約束ではありませんが、例として挙げるのであれば、アサイー、食肉、果実ジュースなど、多様な食文化も見せられればと考えています。来場者が見て楽しむ、そこで考えて感じる、そして味わうことができる、インパクトのある体験ができるよう工夫していきます」(同)
「建築は4月に始まり、12月には引き渡される予定となっています。そこから2024年の4月までにカスタマイズをするスケジュールになります」(同)
また、現在SNS等で、万博を中止または延期して費用を令和6年能登半島地震の復興に回すべきではないかという意見、暗い出来事が続く中だからこそ万博を開催すべきという意見などが出ている中、ブラジルとしてどのように考えているか、という記者からの質問に対し、ジェルジェ庁長はブラジルの立場から万博参加の意義について述べた。
「冒頭でも述べましたが、震災で被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。そのうえでお答えさせていただきますと、私たちは日本においての万博の開催の是非について意見を申し上げる立場にはありません。そのため、ブラジルでの状況をお話させていただきます。ブラジル国内におきましても、万博に大きな金額を投資して出展する意義があるのか、国内にも様々な問題があるのにそのようなところに予算を使うべきなのか、という意見もございます。しかしブラジルといたしましては、それでも、世界がよりお互いを知り合い、世界がより平和に、友好的になっていくために、(万博への)出展は意義があると考えています」(同)
ブラジルパビリオン全体のコンセプトのテーマとしては、ブラジルの文化、歴史、生物多様性、そして、世界中で共通となっている気候変動における命の大切さを尊重する立ち位置などが候補となりうるという。
「気候変動は大きな命の脅威になりうるわけですが、その中におけるブラジルの立ち位置や生物、生物多様性、環境への取り組みをアピールしていきたいと思っています。このようなテーマのアピールが可能になったのも、政権の交代があったことが理由としてあげられます。前政権では、環境問題はさほど重視されなかっただけでなく、海外から批判の対象となるようなことも見られましたが、現在のルーラ政権は環境問題に強くコミットしている政権なので、私たちもそのようなテーマを強くアピールしていくことが可能なのです。(現政権は)森林における先住民の保護・尊重に関しても力を入れています。ブラジルは帰ってきました。問題を起こす側ではなく、問題を解決するソリューションを提供する側として帰ってきました」(同)