ガーナのNGO組織が、ブラジルからマンジョッカ産業の知識や技術移入を計画

2024年 04月 30日

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パラナ州は国内の工業用マンジョッカ生産をリードしている(写真/José Fernando Ogura/Arquivo AEN)

パラナ州は、ブラジル最大のマンジョッカ由来のデンプン生産地だ。マンジョッカ自体の生産ではパラー州に次いで国内第2位だが、国内で最大かつ最新の、デンプンとファリーニャ(マンジョッカ粉)の工業団地がある。

パラナ州農務局農村経済課(DERAL)のメソジオ・グロスコ技術官によると、2019年の国内のマンジョッカ由来のデンプンの生産量は50万9000トンで、パラナ州がそのうち70%を占めていたという。

2023年末に、パラナ州パナナヴァイー市で開催された国際マンジョッカ見本市(FIMAN)に、ガーナのNPO組織アグリハウス財団の創設者アルベルタ・ナナ・アクヤ・アコッサ氏が参加して講演を行った。

講演の中でアルベルタ氏が、ブラジルにおけるマンジョッカの工業製品の知識や技術を学び、マンジョッカによる母国の経済開発に生かしたいと語った。パラナ州の現地紙「ガゼッタ・ジ・ポーヴォ」が伝えている。

日本では英語名キャッサバで知られるマンジョッカ(Manihot esculenta Crantz)はトウダイグサ科(Euphorbiaceae)の植物。南米が原産と考えられている。

塊茎(イモ)や葉が食用として利用されるほか、塊茎から得られるデンプンからは糊などの工業製品も生産される。タピオカドリンクの中に入っているタピオカパールの原料もマンジョッカから得られるデンプンだ。

ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)によると、現在は世界の約 100 か国で生産されており、ブラジルは世界生産量の 5.7% を占めている。国連食糧農業機関(FAO)が公表している2021年の統計では、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、タイ、ガーナに次いで、ブラジルはマンジョッカの生産量で世界第5位となっている。

マンジョッカは適応しやすいこともあり、ブラジルのすべての州で栽培されており、栽培面積では国内の農産物の上位8位、生産額では第6位にランクされているという。

ブラジルでは、ポルトガル人が入植する以前から先住民族がすでに栽培化しており、ポルトガル人の手によって、ブラジルのマンジョッカがアフリカ大陸など世界各地に渡ったと考えられている。

そして現在、アフリカ大陸にある国々は、ナイジェリアを筆頭に年間約5,000万トンの生産量を誇る、世界最大のマンジョッカ(キャッサバ)の生産地となっている。しかしマンジョッカの農業は、アフリカの経済と所得創出に影響を与えるほどの現実には程遠いという。

アフリカ大陸の中で生産量の多い国の上位5位に入っているガーナは年間平均 1,500 万トンのマンジョッカを生産しており、世界的にも際立っていまる。

ガーナでは農業技術がほとんどなくても毎年の収穫量が多いため、地元のNGO組織のアグリハウス財団は、同国内の若い生産者の育成と、マンジョッカを付加価値の高い工業製品に変えるための植栽と収穫の改善に取り組もうとしている。

アルベルタさんは、マンジョッカを、パォンジケージョなどの製品に加工するブラジルの産業開発は成功モデルのひとつであり、生活の糧として今も手作りによるマンジョッカを消費しているアフリカ諸国に、大きな影響を与える可能性があると講演の中で指摘した。

「私たちは女性、若者、生産者たちと共に農業に焦点を当てたプロジェクトを行っていますが、しかし私たちは、我が国のマンジョッカの生産を、そうすべきであるやり方や強化を行っていないことを認識しています。ガーナではマンジョッカの生産は主として食用のために行っています。芋は女性たちの手で自宅で栽培されており、作業は100%手作業です」(アルベルタ・ナナ・アクヤ・アコッサ氏)

「(ガーナでは)マンジョッカは、ブラジルのように付加価値がありません。私たちはブラジルのパラナバイーの農村と産業の構造を知り、その重要性と無数のビジネスの可能性を認識しました。私たちはガーナで雇用と収入を生み出すためのマンジョッカ栽培に焦点を当てた、新しい政府の政策を考えたいと考えています」(同)

ブラジル最大のマンジョッカの生産地はパラー州だが、パラナ州は工業部門における主要な州であり、全国のマンジョッカ由来のデンプン生産量の 70% を占めている。また、同州はマンジョッカの収穫量が多い州の第2位にランクされており、2022/2023年の収穫量は、290万トンだった。全国では年間2400万トンだった。

アルベルタ氏は、パラナ州モデルをアフリカに移入することで、若者たちのためにマンジョッカの農業生産による雇用とキャリアの創出のチャンスを備え,後援したいという。

そして同国で、農村部の労働を、他の職業と比較して劣った活動だとみなしている問題を克服する必要があるという。

「ガーナではかつて、農業は懲罰の一形態と考えられていました。もし学校の成績が悪ければ、田植えや収穫など、農地で働くことが義務付けられていました。そのため農地での仕事に対する否定的な見方が育まれてしまいました。今日に至るまで、農業に従事しようとするのは、ある家族に 10 人の子供がいたとしれもそのうちの一人だけでしょう。農業は良い仕事ではないという認識が依然としてあるからです」(同)

アルベルタ氏はガゼッタ・ジ・ポーヴォ紙によるインタビューで「プロジェクトの目的は、そのような否定的な認識を変え、農業が人を人生の成功に導くキャリア、職業となり得ることを理解してもらうことです」と語った。

彼女によると、マンジョッカはガーナ人の家庭の食卓に並ぶ主要な食材の一つで、最も多くの消費されているのは、マンジョッカを手作業でピューレ状にした“フフ”という独特の料理だという。

財団は、ブラジルのマンジョッカ農業から得られる技術的知識を活用することで、抱えている問題の解決策を見つけ、ガーナにおけるマンジョッカから派生する製品に付加価値を創出したと考えているという。

「わが国ではマンジョッカの工業生産はほとんどなく、ほとんどが個人消費用です。私たちはマンジョッカで大規模にどんなことができるか学んでいるところです。マンジョッカのでんぷんまでも工業生産はほんのわずかで競争も存在しません。マンジョッカは販売される量より、食される量の方が多いのです」(同)

「そのため、私たちにとってブラジルは、マンジョッカが与えてくれるもの、つまり、経済的、専門的、農業技術の面で成長することができるすべてのことを学ぶための、戦略的パートナーのひとつと考えられています」(同)

(文/麻生雅人)