サンパウロにイタリア食文化センター「イータリー・サンパウロ」がオープン

2015年 06月 9日

イータリー サンパウロ

サンパウロは移民の街と言われるが、移民の中でも存在感を放っているのがイタリア系移民だ。その影響は特に食文化において色濃く、街にはイタリア料理の老舗やイタリア家庭料理を提供するレストランやバーが数多く存在する。

同市で常に高い需要に支えられているイタリア料理だが、その根強い人気を受けて5月19日、イタリアの食文化を総合的に扱う「Eataly(「イータリー」)」がオープンした。

ブラジルのグローボ系列の電子メディア「G1」が6月1日付で伝えたところによると、サンパウロにオープンしたイータリーは、「イータリー・イタリア(Eataly Italia)」(イタリア)、「B&Bホスピタリティ・グループ(B&B Hospitality Group)」(アメリカ合衆国)と、「セイント・マルシェ(St Marche)」(ブラジル)の3社が4000万レアル(約16億円)を投じて始めたプロジェクトだという。

イータリーのコンセプトはイタリアの食文化に関わる全てを提供することで、3階建ての建物には食材販売店、レストラン、バー、料理教室などが入っている。食材販売店では、水、ノンアルコール飲料、ワイン、肉、干し肉、チーズ、パスタ類、スイーツなどイタリア料理に関わる商品を幅広く取りそろえている。

商品・食材の調達元はイタリアだけではなく、世界中の2000を超える仕入先から質の良いものを厳選して調達している。仕入先の中にはブラジルの中小企業支援機構(SEBRAE)が支援してきたミナス・ジェライス州カルモーポリス市のマゼー(Mazé)社が含まれている。

マゼー社のメイン商品は果物にシュガーコーティングを施したスイーツ。同社の方針は保存料を極力使わず、できるだけ天然の素材を使うことだ。その方針と商品のクオリティと実績がイータリーのバイヤー、クラウジア・ジェウピさんに評価され、イータリーの仕入先に名を連ねることとなったという。

もう1社、クラウジアさんの目に留まったブラジル国内の生産者がいる。ビール製造販売を行うセルベージャ・ウルバーナ社(以下「ウルバーナ社」)だ。

ウルバーナ社経営陣の一人、アンドレ・カンセイェロ氏は言う。

「今回のイータリーとの契約は当社の成長にとって巨大なトランポリン、大きく飛躍するチャンスなのです。当社のビール銘柄名は世界共通で使う名前に変わりますが、これは世界に出ていく上での戦略の一つです」

上記2社だけでなく、バザール、グラヴェテーロそしてノヴァ・アリアンサがイータリーの国内仕入先に名を連ねている。

仕入先が中小零細化することで物資の調達に関してイータリーは今までの方針を変えざるを得なくなっているという。

「我々小売業を営む者はそろそろ発想を変えなくてはならない時期に来ています。今では既存の流通ルートで手に入るものだけを売っていては商売にならないため、当社は卸業者を通さず自社で生産者を見つけて直接仕入れます。そうすることで中小零細企業の資金回収サイクルを短くすることも可能になります。中小零細企業を相手に60日サイクルで支払っていたら企業は資金繰りに行き詰まり、倒産してしまいます。今後は小さくてもよいものを作っている企業を宝ととらえて、彼らの成長に投資をするというスタンスがますます重要になってくると考えています」(クラウジア・ジェウピさん)

イータリーは2007年、イタリア・トリノを第1号店として営業を始めた。2010年にはニューヨークをかわきりに海外展開を始め、同地での成功を受けて海外進出を本格化させた。

世界全体で29店舗(2015年5月19日時点)を展開しており、うちイタリアで15店舗、日本で9店舗(注:2015年5月19日時点。現在は2店舗)、アメリカ合衆国で2店舗、ドバイ、イスタンブール、そして今回オープンしたサンパウロで1店舗ずつ営業している。

(文/余田庸子、写真/Gladstone Campos/Divulgação)
写真は「Eataly São Paulo」Av. Juscelino Kubitschek, 1489, Vila Nova Conceição, São Paulo(http://www.eataly.com.br/)