「オルフェウ・ダ・コンセイサォン」日本語版出版記念イベント

2016年 11月 30日

オルフェ 福嶋伸洋

マルセル・カミュ監督の映画「黒いオルフェ」(1959年)の原案としても知られる、ヴィニシウス・ヂ・モライスの戯曲「オルフェウ・ダ・コンセイサォン」の邦訳書が、文学者・福嶋伸洋氏の訳で刊行された。

ギリシア神話の中の”オルフェウスの冥府下り”のエピソードを、リオデジャネイロのファヴェーラを舞台に置き換えて書かれた物語「オルフェウ・ダ・コンセイサォン」。

1956年にリオの市立劇場にて、オスカー・ニーマイヤーの舞台装置、トン・ジョビンの音楽監督とピアノ演奏(指揮はレオ・ペラッキ)、ルイス・ボンファのヴィオラォン演奏で上演された。

この戯曲のための作曲家を探していたヴィニシウスは若き作曲家アントニオ(トン)・カルロス・ジョビンと出会い「誰もが君みたいだったら」、「モーホ(丘)の嘆き」、「エウリュディケーのワルツ」などが生まれた。

ヴィニシウスが歌詞を、トンが曲を書いた、戯曲のために生まれたいくつかの曲は、上演後さまざまな歌手によって録音されてヒットした。エレーナ・ジョビンが記したトン・ジョビンの伝記「アントニオ・カルロス・ジョビン ボサノヴァを創った男」(青土社・刊、國安真奈・訳)によると、ブラジルのポップスにおいて歌手だけでなく作者が注目を集めるめるようになったのは「オルフェウ・ダ・コンセイサォン」以降だという。

この戯曲を原案としてフランスの映像作家マルセユ・カミュが作った映画「黒いオルフェ」では、ヴィニシウスとトンによる「フェリシダーヂ」が流れる。

今日ボサノヴァの名曲のひとつとして数えられる「フェリシダーヂ」は、ヴィニシウスが最初に書いた詞とは異なりマルセユ・カミュの意向が反映されたものであったが、映画「黒いオルフェ」自体も、ヴィニシウスにとっては「わたしの作品(戯曲「オルフェウ・ダ・コンセイサォン」)のパトス(情感)を理解することができずに、ブラジルをめぐる異国情緒の映画」だったという。

日本ではその全貌を知ることがむつかしかったヴィニシウス・ヂ・モライスによる戯曲「オルフェウ・ダ・コンセイサォン」の邦訳書籍の登場は、ボサノヴァ・ファン、ブラジル文化を愛する人にとって、長く待ち望まれていた1冊といえるだろう。

「オルフェウ・ダ・コンセイサォン」(松籟社)の出版を記念して、12月2日(金)、ラテン文化サロン「cafe y libros」では、訳者の福嶋伸洋氏を迎えて出版記念イベントが行われる。トークショーでは、訳書「マクナイーマ つかみどころのない英雄」(松籟社)、「リオデジャネイロに降る雪 – 祭りと郷愁をめぐる断想」(岩波書店)、「魔法使いの国の掟 -リオデジャネイロの詩と時」(慶應義塾大学出版会)などの著書を通じてブラジルという国や文化について語られる予定。

リオデジャネイロに降る雪

出版記念イベントは12月2日(金)開場18時30分(開始19時)~、参加費 2000円(ドリンク(ブラジル産クラフトビール、カシャッサ、ワイン、ソフトドリンク、コーヒーなど)、手作りトルテイリャ・エスパニョラ、スイーツ、おつまみ付き。会場はCafé y Libros(品川区上大崎2-20-4、最寄り駅は目黒駅)。

問い合わせはCafé y Libros :info@cafeylibros.com, tel:03-6228-0234まで。

(文/麻生雅人、写真提供/Café y Libros)