東京オリンピック男子サッカー決勝、ブラジルがスペインを倒し2連覇を飾る
2021年 08月 13日
東京オリンピックが8月8日(日)に閉幕した。コロナ禍という緊急事態の状況下で行われた大会だったが、競技に関しては何とか大きなトラブルもなく全日程を終了した。
サッカー男子決勝は、閉会式の前日、8月7日(土)20:30から横浜国際競技場で行われた。
ブラジル対スペインという、サッカーファンにとってはとても楽しみな、南米とヨーロッパの強豪同士の対戦カードとなった決勝戦は、そんな期待に応えた、見応えのある素晴らしい試合になった。
ところが、そんなサッカーファンにとって注目度の高い試合だったにもかかわらず、なんと、日本ではテレビの生中継はされなかった。
オリンピックが、ワールドカップなどほかの大きな大会と決定的に違うことは、テレビ放送がほとんど日本戦しか行われないことだ。
サッカーの大会でいえばワールドカップをはじめ、ユーロ(ヨーロッパ選手権)やコパアメリカ(南米選手権)のような大陸ごとの大会に関しても、グループリーグを含めた全試合を生中継しているのとは、大きく異なる。
決勝トーナメントに入っても、日本戦以外は放映されず、ネット配信で見るしかなかった。
そうはいっても、さすがに人気スポーツである男子サッカーの決勝戦くらいは生放送すると思っていたし、テレビの番組表を見て、安心していた。NHK-BSで生中継することになっていたからだ。
しかし、その時間にテレビをつけてみると空手をやっており、テレビに内蔵されている番組表を確認すると、いつの間にかサッカー決勝の文字は消えており、空手に変わっていた。「こんなことってあるんだな」と驚きと同時に失望したが、仕方ないのでネット配信で見ることにした。
そんな決勝戦だったが、フル代表の主力6名を連ねたスペインに対し、ブラジルは互角以上に戦っていた。
ポゼッションサッカーのスペインに対し当然ポゼッションでは劣るが、それほどポゼッションされていないという印象だった。それよりも、ブラジルは効果的にボールを奪い、うまく攻撃を組み立て、スペイン以上にチャンスを作っていた。
そして前半37分、ブラジルにPKのチャンスが訪れた。
キッカーは当然、エースのヒシャーリソン(エバートン)だ。
しかし、ヒシャーリソンはこれを外してしまう。
ブラジルは絶好のチャンスを逃してしまった。
グループリーグではゴールを量産していたヒシャーリソンだったが、決勝トーナメントではきついマークもあり、結果を出せていない。ぜひともここで決めて、リズムに乗りたかったことだろう。
PKの失敗もあり、その後少しスペインの時間帯が続いた。これでスペインに流れが傾くかとも思われたが、ブラジルはしっかりと守った。
そんな中、前半終了間際に、ブラジルにゴールが決まったのだ。
前半アディショナルタイム、左サイドのクラウジーニョ(レッドブル・ブラガンチーノ)からのクロスをゴールラインぎりぎりでダニエウ・アウヴェス(サンパウロ)が折り返し、マテウス・クーニャ(ヘルタ・ベルリン)がゴールを決めたのだ。
マテウス・クーニャは準々決勝のエジプト戦に続き、貴重なゴールを決めてくれた。また、キャプテンのダニエウ・アウヴェスは、ここで大仕事をやってのけてくれた。
待望の先制点をブラジルは最高の時間帯に取ることができた。
前半は、ブラジルが1-0でリードして折り返した。
前半の終盤に、ふとテレビをつけてみたら、いつの間にかNHK-BSでサッカーの決勝戦を放送していた。それならテレビで見ようかと思ったが、よく見たら表示されている時間がだいぶ違っている。何と、15分ほど遅れて放送されているのだ。
いくらテレビ中継とはいえ、スポーツ観戦はリアルタイムで見ないと意味がない。なんでこんなことが起きているのかと思ったが、それはNHKの判断なので仕方がない。
NHK-BSは結局最後まで、リアルタイムでの放送にはならなかった。15分遅れで見ても仕方ないので、ネット配信で見続けることにした。
後半に入り、61分(後半16分)にオヤルサバル(レアルソシエダ)の目の覚めるようなボレーシュートが決まり、1-1の同点になった。
その後は一進一退。ほぼ互角だったが、ブラジルのほうがやや優勢に感じられた。90分間では勝負がつかず、延長戦に入った。
そして、108分(延長後半3分)にドラマは待っていた。
スペインのコーナーキックのこぼれ球をブラジルの11番、アントニー(アヤックス)が拾い、迷うことなく左前方に絶妙のロングパスを出した。それを、途中出場のマウコン(ゼニト)がうまく受け、ゴールを決めたのだ。
待望のゴールが決まり、ブラジルの選手、関係者はこれ以上ないぐらいの喜びを爆発していた。
残り10分少々あったが、ブラジルは守り一辺倒にはならずチャンスとみたらシュートを狙っていた。
そのまま試合は終わり、ブラジルが2-1で勝ち、前回のリオデジャネイロ大会に続き連覇を決めた。
それにしても、素晴らしい試合だった。まさに、オリンピックの決勝にふさわしい試合だった。
会場となった横浜国際競技場は、2002年に日韓共催のワールドカップでタイトルを取ったところだ。実に19年の時を経て、ブラジルは同じ場所で歓喜を味わうことができたのだ。
今大会のブラジルの戦いについて、グループリーグは見ることができず、決勝トーナメントの3試合を見た。
その3試合の中で、間違いなくこの決勝戦が一番よかったと思う。
フル代表に選ばれている選手は少ないが、いい選手が多いと思った。
決勝ゴールを決めたマウコン、左サイドで数多くのチャンスをつくり出したアラーナ(アトレチコミネイロ)などもいいと思ったが、圧倒的に印象に残ったのは、11番をつけたアントニー(アヤックス)だ。
右サイドを主戦場にするウイング。ドリブル突破、パス交換と小気味いいリズムでプレーする。ブラジルらしさをとても感じさせるプレースタイルだ。右サイドからのチャンスは必ずといっていいほど、このアントニーが絡んでいた。ヒシャーリソンと同じ様に金色に染めた短い髪がとても似合っていたし、目立っていた。
最後の最後に、決勝点をアシストする大仕事をやってのけてくれたアントニー。ブラジルの名門、サンパウロから昨年、オランダのアヤックスへ移籍し、初年度から出場回数を多く活躍している。21歳とまだ若く、これからがとても楽しみな選手だ。
この試合を見て、これからのブラジルはとても楽しみだと思った。
ほとんどフル代表といってもよい本気のスペイン相手に互角以上の戦いが出来、勝ち切り、優勝することができた。この試合は、大きな試金石となったことだろう。
コパアメリカでは宿敵アルゼンチンに敗れ惜しくも準優勝に終わったが、総合力で見ると決して負けてはいない。むしろ上だろう。
ワールドカップはもう来年だ。次のワールドカップ カタール大会は、2022年11月から12月にかけて行われる予定である。
ワールドカップでは、ヨーロッパの強豪相手にも十分戦えるのではないだろうか。そんなことを感じさせてくれた、素晴らしいオリンピックの決勝戦だった。
(文/コウトク)