ブラジルで話題。「貧困バーガー」、「給付金バーガー」って!?
2015年 09月 11日「miséria(みじめさ)」、「pobreza(貧困)」…。新聞の社会面の見出しかと思いきや、実はこれらはいずれも、ファストフード店にあるハンバーガーの名前だ。
グローボ系ニュースサイト「G1」が9月5日付で伝えたところによると、「miséria」や「pobreza」は、ブラジル北部アマパー州の州都マカパー市にあるハンバーガー店の人気メニューとのことである。
「Super Pobr’s(スーパー貧乏)」、「Pobr’s(貧乏)」、「Renda pra Viver Melhor(生活向上給付金)」等々、この店のメニューには飲食店ではなじみのない名前が並ぶ。
「Bolsa Familia(ボウサ・ファミリア…政府による生活扶助のための給付金制度)」、「Bolsa Escola(ボウサ・エスコーラ…政府による通学支援制度)」などブラジルで実際に行われている給付金制度の名がつけられたハンバーガーもある。
値段も3レアル台から一番高いもので12レアルまで、と看板に偽りなしの安さで、マカパー市民から支持を受けている。
家計の足しになればと思って数年前に始めた軽食堂が、今や家計の中心となっている、とオーナーのカイージ・カラードさんは語る。
11歳になる息子に動物アレルギーがあることが判明したことがきっかけで、ペットショップを廃業したカイージさんは、飲食業を始めた。最初は大変だったが、固定客を得るための施策が功を奏した。
しかもここ、お店の名前も「Pobr’s(貧乏人の店)」!
「(店の)名前はこの地域を表しています。ここは貧しいのです。最初は名前を『pobres』(ポルトガル語で「貧乏人たち」、の意)としていました。ある時、ある有名飲食チェーン店の短縮形のロゴマークでを見て、それが気に入って今の店名に変えました。そのロゴマークの影響は受けていますが、私の店の名前はちゃんと商標登録されていますし、その有名飲食チェーンのマカパー店オーナーも、私のところに来て、クリエイティヴィティに賛同してくださいました(笑)」(カイージさん)
現在の店名のアイディアのもとになったファストフードチェーンは「Bob’s」だろう。
「Pobr’s(貧乏人の店)」第1号店は州都マカパーの大学前にあり、ホットドッグの安さで学生たちの注目を集めた。商売はどんどん広がり、パーティや人が集まるイベントにも仕出しをしている。
メニューには牛肉、卵、ソーセージ、鶏肉、サラダそしてカラブレーザ(ブラジル式生ソーセージ)などの具が記載されている。店の発展とともに店主の遊び心に満ちた、社会福祉プログラムを風刺したメニューが増えていった。
「Pobr’s」には「Pobreza Suprema(ビンボー最上級)」というメニューがあり、パンの間にフィレ肉、ベーコン、エビ、カラブレーザ、牛肉、チーズ、ハム、モルタデーラソーセージを挟んである。
一方、「Rico(金持ち)」サンドは、経済危機の影響でパン、牛肉とサラダのみがはさんであるだけである。
これらのメニューの名前とその中身はカイージさんが自分の経験からインスピレーションを受けたものだという。
「以前に一度、このマカパーで重要人物とされている人が集まるおしゃれなイベントに招待されたことがありました。そこにいる間、提供されたのはカクテル1杯のみでした。おなかペコペコで着いたのに、それだけだったんです。そのすぐ後に携帯電話が鳴って、友人の母の誕生日パーティに呼ばれました。友人の家は市の中心部から外れた地域にありましたが、すぐに向かいました。友人の家には風船が3つしか飾ってありませんでしたが、マカロニ、リゾット、ケーキ、タルトなどなど、食べ物がたくさんあり、家に持ち帰らせてもらえるほどでした」とカイージさんは振り返る。
売上をさらに伸ばすために、カイージさんは市の中心部以外にも新たな出店を考えているところだという。
(文/余田庸子、写真/Jefferson Rudy/Agência Senado)
写真は、実際の「ボウサ・ファミリア(生活扶助のための給付金制度)」の受給者カード