ブラジルで、元ストリートチルドレンだった男性が最高裁判所の弁護士に

2015年 10月 13日

ストリートチルドレンから弁護士に

経済危機、汚職スキャンダル、所得格差の拡大など暗いニュースが多い昨今のブラジルで、多くの人に希望を与える物語が静かに広がっている。グローボ系ニュースサイト「G1」が9月15日づけで紹介した元ストリートチルドレン、イズマエウ・バチスタさんの物語だ。

「G1」は8歳で家を飛び出し、貧しい生活を送っていた子供が連邦最高裁判所勤務の弁護士になるまでの奇跡の半生を、本人の談話を交えて紹介している。

イズマエウ・バチスタさんは8歳の時、当時家族と住んでいた連邦直轄区のサマンバイアにあったバラック小屋を飛び出し、ジュセリーノ・クビシェッキ空港の施設内に住んでいた。

1年ほどターミナルのロッカールームに寝泊まりしていたが、空港で働く職員と仲良くなり、そこで出会った一人の女性の家族として迎え入れられることになった。家族はその後彼が連邦最高裁判所と検察庁の試験に合格するまで支えていくことになる。

サマンバイアに住んでいた時、イズマエウさんの父はドラッグ常用者に撃たれて亡くなったという。

「父は家の近くでマリファナを吸っていたごろつき連中と時々もめていたんです。父は北東部の出身で正義感が強く、犯罪者を許せなかったのです」

イズマエウさん自身も家の中で流れ弾を被弾した。父の死後、母が働きに出ている間、2人の兄弟の面倒を見なくてはならなくなった。

「5歳の時、2歳の弟の面倒を見ていました。母は夜に料理を作っておいてくれて、自分がいない時に温められるようにと、私にガスレンジの使い方を教えてくれました」

その時まで母は主婦だったが、再婚するまでの間、家族を養うために客室乗務員として何か月か働くようになった。

「母は何度か職場に連れて行ってくれて、私は空港に魅せられました」

そのころから母には自分はいつかパイロットになる、とよく言っていたという(次ページへつづく)。

(文/余田庸子、写真/A Raça de Ismael/Reprodução)
ブラジリア。連邦最高裁判所の前に立つイズマエウ・バチスタさん