国際シンポジウム「リオから東京へ 建築がつなぐオリンピックと都市計画」開催される
2017年 05月 31日ブラジルの首都ブラジリアにある駐ブラジル日本大使館の設計を手掛けた建築家の槇文彦氏は、ブラジルとの出会いと経験、現在の東京をどう考えているかについて語った。
自身のエッセイ集「Nurturing Dreams」(MIT Press)の表紙の写真が、リナ・ボ・バルディが手掛けた文化施設セスキ・ポンペイア(サンパウロ市)の建築デザインにオマージュを捧げたものであるというエピソードや、ブラジリアの都市計画のマスタープランで知られる建築家ルシオ・コスタにインタビューをしたときの思い出も語った。
また、「たとえどんな美しい建物ができたと思っても、時が作ったものを最終的に審判する。時が豊かな記憶を累積していく」という建築に対する哲学も語った。
「環境デザイン研究室」を主宰する中央大学理工学部人間総合理工学科の石川幹子教授は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて進められている新国立競技場の建築に伴う問題を指摘した。
100年という時をかけて人の手で造りあげられ受け継がれて来た明治神宮の外苑の樹木の伐採問題や、新たに作られる立体公園計画が抱える環境問題、渋谷川の清流復活案などを紹介した。
「新国立劇場の建設問題は、もうすでに決着がついたと思われがちですが、まだ闘っています。ザハ(・ハディッド)さんの(競技場の)計画は白紙撤回されたと思われがちですが、周辺環境の計画はまったくかわっていません」(石川幹子教授)
石川幹子教授によると、新国立競技場の建設に伴い新たに作る人工地盤の一部は明治公園内にまたがっているため、公園の面積が減らさないよう代替えの土地を用意しなければいけないところ、土地代が高く代替え地を出せないことから、立体公園制度が都市計画に盛り込まれた経緯があるという。
「競技場の屋根の上に公園を作って緑を植えて2階に川を流せばいいという、私たちにしてみればとんでもない都市計画が進んでいます」(石川幹子教授)
石川教授は、人工地盤は土壌の厚さの問題で木の生育に限界があるため、日本スポーツ振興センター(JSC)が公表している計画予想図のように緑にが繁るとは考えにくいと指摘した。
この立体公園計画はシンポジウム後、計画が一部見直され縮小が報じられたが、問題の行方は気になるところだ。
石川教授が委員長をつとめる日本学術会議環境学委員会都市と自然と環境分科会による「神宮外苑の環境と新国立競技場の 調和と向上に関する提言」は
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t211-1-1.pdfを参照。
「建築倉庫ミュージアム」(東京都品川区東品川 2-6-10 寺田倉庫本社ビル1F。開館:日~木/11:00-20:00、金・土/11:00-21:00)で開催中の「現代ブラジル建築模型展」は6月11日(日)まで開催中。オスカー・ニーマイヤーの手による「サンフランシスコ・ヂ・アシス教会」、パウロ・メンデス・ダ・ホッシャの手による、1970年大阪万博でのブラジル・パビリオン、リナ・ボバルディのサンタ・マリア・ドス・アンジョス教会の建築模型を展示中。
(写真・文/麻生雅人)