ブラジルのベンチャー企業、クラフトビール界に新風
2018年 08月 6日日本でもすっかり市民権を得たクラフトビール。小規模生産者が独自の製法で編み出す味わい深さで世界中の国々においてシェアを伸ばしてきている。
ブラジルでも数年前からクラフトビールの消費・生産は増えており、農牧供給省によると、2017年だけで前年比で約40%銘柄数が増え、年末時点の登録銘柄数は679に上ったとのことだ。
TVグローボが経済情報番組「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランヂス・ネゴーシオス」で伝えたところによると、クラフトビール業界をますます盛り上げるアプリを開発したベンチャー企業があるという。
サンパウロ市のヴィトール・クーニャさんがビール愛好家、製造元、業界振興団体を結びつけることを思いついたのは2016年。当時、クラフトビールの銘柄が急激に増えてきて、かなり玉石混交の状態になってきていた。
愛好家にとっては、自分好みの銘柄を見つけるのがだんだん難しくなってきていた。
クラフトビールの種類は増え続けており、製造側も切磋琢磨し、クラフトビール関連の研修プログラムの人気はとどまるところを知らない。また、醸造所を持たず、家の台所で作り始める愛好家たちも増えてきている。現在の法令では家庭の台所で作った製品は商品として流通させることはできないが、ビール製造側は商品として量産を始める前に自分の製品の市場価値を知る場を求めている。
これらの需要をうけて生まれたのが、ヴィトールさんのアプリだ。
2017年、ヴィトールさんはビールソムリエのダニ・ガヒードさんと組んで、ピア・トゥー・ビアー(以下「P2B」)を設立した。新たなクラフトビールを世に出すためのプラットフォームとしてスマートフォン用アプリを開発し、マッチングサービスを提供している。
ビール製造者はP2Bのアプリを通じてマッチングプログラムに登録し、自分が作っているビールのレシピ、製品に関するエピソード等を公開する。試飲と評価を行うビール愛好家もまた登録制で、公開されているビールの情報を見て試飲したいビールの製造者に59.90レアル(約1800円)を支払い、サンプル提供を受け、評価をする。
ビール愛好家としてP2Bに登録し、すでに12種類の試飲と評価を行ったマルセロ・トラウヂさんは、この評価システムについて次のように語っている。
「ビール製造者たちは自分の身の回りの人以外からの客観的な意見を求めています。私が試飲した中のいくつかは、現在市場に出ている製品よりもクオリティがずっと高かったです」(マルセロさん)
評価を行うのは愛好家だけではない。ビールソムリエなど専門家も評価に加わっている。各銘柄はコンペティション形式で愛好家・専門家の両方の評価を加味して選別され、上位入賞者のビールは量産・流通へと進む。
現在はビール醸造所で自作のクラフトビールを作るブルーノ・オッタヴィアーノさんは、オレンジとハイビスカスティーをブレンドした赤いビールを作ってコンペティションで優勝した。
「このビールを買う人たちは必ずしもビールのことをよく知っている人たちばかりではなく、最近クラフトビールを知った人たちが多いようです。作る側、買う側両方にとって学びになっているということですね」(ブルーノさん)
ブラジルは経済発展に伴い、知名度に関係なく「いいもの」を求める層が広がってきている。P2Bのような、製造現場とマーケットが直接・率直に向き合う場が広がることによって、内需に厚みに増し、ブラジル経済は新しいフェーズに入っていくのかもしれない。
PEER2BEER(ピア・トゥー・ビアー)
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(文/原田 侑、写真/Reprodução/TV Globo/Pequenas Empresas Grandes Negócios)
写真はグローボ系列の経済情報番組「ペケーナス・エンプレーザス・イ・グランヂス・ネゴーシオス」より。。TVグローボ系列の番組はIPCTV(グローボ・インターナショナル)で放送中。視聴の問い合わせは、080-3510-0676 日本語対応ダイヤルまで)