第32回東京国際映画祭、開幕。“キューバン・ファイヴ”の実話をもとにした「WASPネットワーク」も上映

2019年 10月 28日

第32回東京国際映画祭で上映される「WASPネットワーク」(写真提供/東京国際映画祭/ ©OrangeStudio )

第32回東京国際映画祭が10月28日(月)に開幕した。

映画祭では「コンペティション」部門で世界各国から出品された14作品が競い合うほか、「アジアの未来」部門、「日本映画スプラッシュ」部門、「特別招待作品」部門、「JAPAN NOW」部門、「ジャパニーズ・アニメーション」部門など、多様な作品が上映される。

日本での公開が決まっていない海外の映画祭での話題作を紹介する「ワールド・フォーカス」部門では、キューバに対するテロ活動に立ち向かいアメリカ合衆国で長年、不当に拘束された「キューバン・ファイヴ」の実話をもとにした映画 「WASPネットワーク」 が上映される。

「WASPネットワーク」 (2019/フランス、スペイン、ブラジル)は、ブラジル人作家フェルナンド・モライスが2011年に発表した実話をもとにした著作「冷戦の最後の戦士たち」の映画化作品だ。

物語の舞台は1990年代。旧ソビエト連邦崩壊後、キューバは観光によって経済を立て直しつつあった。

しかし、アメリカ合衆国に亡命した反カストロの極右活動家たちが、フロリダを拠点にして、カストロ政権下のキューバ復興を阻もうとして数々のテロ行為を繰り返していた。キューバのサトウキビ栽培に打撃を与えたりハバナ空港の通信妨害などを行い、多くの死者を出していたという。

キューバは、男性12名、女性2名からなるWASPネットワークを結成してフロリダに潜入させて、これらのテロ行為を阻止するため情報収集を行った。実際、WASPネットワークによる潜入捜査で多くの命が救われたという。

合衆国側によるキューバへのテロ攻撃が激化していた1996年、領海侵犯を繰り返していた、亡命キューバ人の保護を名目に活動していた 反カストロ組織のひとつで 「レスキュー・ブラザーズ」の航空機がキューバによって撃墜される事件が起きた。

事件を契機に合衆国が反キューバ政策を推し進める中、FBIによって、潜入していた WASPネットワークの14名中10名が1998年、不当に逮捕された。

うち5名は合衆国に情報を提供する保護プログラムを受け入れたが、これをはねのけたヘラルド・エルナンデス、ラモン・ラバニーノ、アントニオ・ゲレロ、フェルナンド・ゴンサレス、レネ・ゴンサレスの5名は、2001年に終身刑または懲役10年以上の有罪判決を言い渡された。

無罪を訴えつづけた5名は「キューバン・ファイヴ」と呼ばれ、国際社会でも解放を求める声が高まっていった。国連人権委員会やアムネスティも5名を支持、 やがてフェルナンド・ゴンサレスとレネ・ゴンサレスは釈放されたが、残る3名は拘束されつづけた。

アムネスティによると、3名が自由を取り戻したのは、2014年にバラク・オバマ元大統領によるキューバとの国交正常化を目指す取り組みの一環として行われたキューバとの捕虜交換によってだったという。

「 WASPネットワーク」の配役では、ヘラルド・エルナンデ ス(マヌエル・ヴィラモンテス)に ヴァウテル・サリス監督作 「モーター・サイクル・ダイアリーズ」 (04)で若き日のゲバラを演じたガエル・ガルシア・ベルナル 、レネ・ゴンサレスに「リベレイター 南米一の英雄 シモン・ボリバル 」(13)でシモン・ボリバルを演じたエドガー・ラミレスと、中南米の革命家を演じた俳優が起用されている。

物語の軸となるレネの妻オルガ役には、「ウーマン・オン・トップ」(00)でバイアーナを演じたペネロペ・クルスが扮する。

演出はフランスのオリヴィエ・アサイヤス監督(「溺れゆく女」、「パーソナル・ショッパー」)。

その他、 ブラジルの人気俳優ヴァギネル・モウラ(「エリート・スクワッド」、「エリジウム」など)、リオ出身で現在はアメリカ合衆国で活動するジゼーラ・シッピなどが出演する などが出演する。

「WASPネットワーク」 は 10月31日(木)15:10~ TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN7、11月3日(日)17:20~ EXシアター六本木で上映される。詳細は https://2019.tiff-jp.net/ja/lineup/film/32WFC05 を参照。

(文/麻生雅人)