ヒカルド・バセラール、気鋭ヴィオロニスタのカイナン・カヴァウカンチと“パラコスム”を創出

2021年 06月 7日

カイナン・カヴァウカンチ(左)とヒカルド・バセラール(右)(写真/Davi Távora)

ブラジルのインスト界で活躍するピアニスト、ヒカルド・バセラールが5月28日(金)に新作アルバム「Paracosmo(パラコズモ)」を発表した。

「Paracosmo」

アルバムタイトルのパラコズモ(パラコスムのポルトガル語)とは、明確な独自の地理・歴史・言語などが設定された、想像上に構築された世界。その説明では、子ども時代に想像の中で作り上げる世界、「ハリー・ポッター」シリーズの“魔法界”、「指輪物語」の“中つ国”などが例に挙げられることが多い。

ヒカルドは、本作(及び表題曲)のタイトルに、音楽を通してコロナ禍下でも希望を忘れずにいられるように、という願いを込めて、この言葉・概念を選んだという。

「タイトルの“Paracosmo(パラコズモ)”には、想像上の場所という意味があります。そこではどんなことも可能です。日本と違い、ブラジルでは未だに多くの人々が(新型コロナ感染拡大のために)家にこもらざるを得ない状況に置かれています。例えば学校の授業も毎日は行われていません。しかし、このコロナ禍のなかでも、Paracosmo(パラコズモ)でなら人々は音楽によってよりエネルギーを感じることができるのです。音楽にはそんな力があるのです」(ヒカルド・バセラール)

「Vila dos Pássaros」

ピアノ、キーボード、パーカッションを演奏したヒカルドは、「このアルバムを貫くのは強力な自然発生的な流れです」と語る。

「演奏していたら、そこに自然と曲が湧き出てきたのです。それらはまるで予め作曲されていたインストゥルメンタル曲のようでした。それは実にスムーズな創作プロセスでした」(ヒカルド・バセラール)

また本作は、ヒカルド同様インスト界で活躍するヴィオラォン奏者カイナン・カヴァウカンチとの共演作品となっている。

カイナン・カヴァウカンチ(写真/Davi Távora)

カイナン・カヴァウカンチは、1990年生まれで、ギンガも賞賛する気鋭ヴィオロニスタ。2000年にわずか10歳で「第4回ブラジル・ヴィオラォン・コンクール“Musicalis”」で優勝して注目を集め、2002年に「Morador do Mato」でアルバムデビューを果たした。以降、国際的な音楽フェスティバルでも評価され、活動の場は世界に広がっている。本作ではカイナンはヴィオラォンとベースを演奏している。

カイナンはヒカルドと同郷のセアラー州フォルタレーザで、これまでにも互いに交流はあったが、共に演奏したのは今回が初めてだったという。

「私たちは自然の流れに身を任せるように演奏しました。まるでこの作品が、自発的に出来上がったかのように」(ヒカルド・バセラール)

「二人で弾き始めるや、曲がもう出来上がっているかのようでした。自由な即興、誠実なメロディー、豊かに広がるイメージ、すべてがそこにはありました。そしてそのすべてが、希望に満ちたこの場所“パラコズモ”にあったのです」(カイナン・カヴァウカンチ)

「Paracosmo(パラコズモ)」

ヒカルド・バセラール&カイナン・カヴァウカンチ「Paracosmo(パラコズモ)」は
Spotify: https://open.spotify.com/album/5yfOkZ5sWn2Kw2CR5N1FNB
Apple Music: https://music.apple.com/us/album/paracosmo/1566424857
Amazon Music:
https://www.amazon.co.jp/-/en/Ricardo-Bacelar-Cain%C3%A3-Cavalcante/dp/B09473Y61X/ref=sr_1_6?dchild=1&keywords=Ricardo+Bacelar+%26+Cain%C3%A3+Cavalcante&qid=1623044344&s=dmusic&search-type=ss&sr=1-6
などで配信中。

CDは日本国内では西荻窪「アパレシーダ」(http://aparecida.jp/)で販売中。

(文/麻生雅人)