リベルタドーレス2021決勝、 パウメイラスが2年連続でブラジル勢対決を制す
2021年 12月 11日
11月27日(土)午後5時(日本時間28日(日)早朝5時)、南米クラブNo.1を決めるリベルタドーレスの決勝がウルグアイの首都モンテビデオで行われ、パウメイラスが2大会連続及び3回目の優勝杯を掲げた。
今年(2021年)の決勝戦の対戦カードは、パウメイラス対フラメンゴというブラジル勢同士の対戦となった。
昨年(2020年)の決勝戦もブラジル勢対決となっており、パウメイラスがサントスを破り南米王者に輝いている。
フラメンゴは一昨年の南米王者であり、昨年はホジェリオ・セニが監督を務めブラジル全国選手権の優勝を飾ったことは記憶に新しい。
ここ数年好成績を残しており、名実ともにとても充実している2チームが決勝に進んだ今年のリベルタドーレスだが、ベスト8にはブラジルから5チームが入っていた。ブラジル勢の好調ぶりが目立つ。
ポルトガル人監督アベル・フェヘイラ率いるパウメイラスは、タイトルを取った昨年とほぼ同じメンバーだ。
一方のフラメンゴは、監督がホジェリオ・セニからヘナト・ガウーショに変わっており、選手の顔ぶれも豪華だった。エースは昨年と同様、ガビゴウことガブリエウ・バルボーザ。今年もゴールを量産しており、ブラジル代表にもコンスタントに選ばれ、今絶好調といえるだろう。
そしてDF陣も豪華だ。CBにブラジル代表の常連ダヴィド・ルイスとホドリゴ・カイオ。そして、左SBはこれも一時期代表でレギュラーだったフィリペ・ルイスという陣容。見ているだけでわくわくする。
昨年全国選手権のタイトルを獲得したときの監督はホジェリオ・セニだったが、今年7月に成績不振のため解任されている。
ちなみにこのホジェリオ・セニだが、今年10月には成績不振にあえぐサンパウロの監督に就任している。何というめぐり合わせだろうか。サンパウロの絶対的レジェンドが、巡り巡って古巣で指揮を執る機会に恵まれたのだ。サンパウロのファンにとっては、これ以上の喜びはないだろう。
さて、話をリベルタドーレスの決勝に戻そう。
舞台はウルグアイのモンテビデオだが、観客席はフラメンゴとパウメイラスのサポーターで埋め尽くされていた。集客は定員の75%ということだったが、スタジアムを上空から見ると、チームカラーの赤と緑にきれいに分かれており、ほぼ満席に感じられた。
リベルタドーレスはヨーロッパのチャンピオンズリーグなどとは違い、長らく決勝戦も他の試合と同様にホームアンドアウェイで行われていた。しかしながら、2019年大会からチャンピオンズリーグなどと同様に、中立地での一発勝負に変わった。そのためだろうか、お祭り的な要素が加えられ、試合前には、地元歌手によるパフォーマンスなども行われていた。
試合は序盤から、豪華メンバーのフラメンゴが攻め立てていたが、先制したのはパウメイラスだった。
前半6分、DFからの縦パス1本の鋭いカウンターからゴールが決まったのだ。まさに奇襲攻撃だ。呆気にとられるほど、鮮やかなカウンターだった。
その後も、豪華メンバーのフラメンゴが攻め立てるがゴールは遠く決まらない。
前半30分には名手フィリペ・ルイスが負傷退場してしまう。フラメンゴにとって、痛い負傷交代だ。
後半に入っても、同様の展開が続いていた。
攻め立ててもどうしてもゴールだけが決まらず停滞ムードが漂い始めた後半27分、フラメンゴにとって歓喜の瞬間が訪れたのだ。
ガビゴウがゴールを決めたのだ。
まさにガビゴウだ。角度のないところから放った鋭いシュートは、ここしかないというコースを辿りゴールに吸い込まれていった。
このゴールにガビゴウも狂喜乱舞し、興奮してユニフォームを脱いで喜んでいた。当然の如く非紳士的行為でイエローカードをもらったが、喜びを抑えきれなかったのだろう。それにしても、さすがガビゴウだ。決めてほしいときに決めてくれる。
これで試合は振り出しに戻った。おもしろくなったと思った。
その後両者ゴールを決めることができず延長戦へ入った。
しかし、楽しみにしていた延長戦だったが、とんでもないドラマが待っていた。
延長前半5分、フラメンゴのボランチ ペレイラが、GKへバックパスしようとしたときに、ピッチの芝に足を取られてしまい、その隙にパウメイラスのFWデイヴェルソンにボールを奪われ、そのままゴールを決められてしまったのだ。
一瞬、何が起こったのかわからないほどだった。まさに事故のようなものだった。
まだ時間は十分にあるのだが、フラメンゴにとって、このミスの衝撃はあまりにも大きかったのだろう。そのまま、フラメンゴはゴールを奪い返すことができず、パウメイラスが2対1で勝利し、連覇を果たした。
この試合、まるで、個人技溢れるスペクタクルな攻撃的サッカーと典型的な堅守速攻の超守備的サッカーの戦いのように思われた。
パウメイラスの戦い方を見て、ブラジルにもこんなチームが現れたんだなぁ、とちょっと寂しい思いを受けてしまった。
パウメイラスの監督アベル・フェヘイラはポルトガル人監督の大先輩ジョゼ・モウリーニョを敬愛しているようだ。
確かに、モウリーニョが築き上げた一昔前のインテルのサッカーに似ていると思った。
今のブラジルのサッカーでは、代表監督チチも守備的だと言われる。
しかしながら、チチのサッカーは退屈さを感じさせない。守備的だと言われるが、全員が守備の意識を強く持ち、全員攻撃・全員守備で迫力のあるサッカーを見せてくれている。
しかし、サッカーは勝ってなんぼなのだ。
いくらアベル・フェヘイラのパウメイラスのサッカーをつまらなく感じても、勝つことに価値があるといえるのだろう。
リベルタドーレスを制したパウメイラスは、南米王者としてクラブワールドカップ(以下クラブW杯)に出場する。
クラブW杯2021年大会は、今年12月に日本で行われる予定だった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響で、日本は大会開催を辞退し、アラブ首長国連邦で来年(2022年)2月に行われることに変更されている。
南米代表が決まったことで、開催国枠を含め出場する全7チームが確定した。
ヨーロッパ代表はチェルシー(イングランド)、アジア代表はアル・ヒラル(サウジアラビア)だ。残念ながら日本のチームは出場しない。
パウメイラスは昨年、決勝でヨーロッパ代表と戦う以前に、3位決定戦にも敗れ、1勝もすることなく大会を去る、というこれ以上ない屈辱を味わった。
ブラジルのほかのクラブのサポーターたちから格好の笑いものにされてしまったのだ。
今年はどのような戦いを見せるのだろうか。昨年の雪辱を晴らすことはできるのだろうか。それとも、昨年同様、他のクラブのサポーターから格好の笑いものにされるのか。
結果は2か月後にわかることになる。
(文/コウトク)