さくらんぼの新品種「やまがた紅王」、輸出も視野にプレデビュー。「地球の反対側にも届けられれば…」

2022年 07月 5日

やまがた特命観光・つや姫大使も務める歌舞伎俳優の中村橋吾氏(左)と 吉村美栄子山形県知事(右)(撮影/麻生雅人)

7月1日(金)、歌舞伎座(東京・中央区)で、サクランボの新品種「やまがた紅王」の発表会見が行われた。

会見には、山形県知事の吉村美栄子氏、JA全農山形運営委員会会長の折原敬一氏、(株)サンフルーツ販売部長の阿部昌弘氏、山形県鶴岡市出身の歌舞伎俳優で、やまがた特命観光・つや姫大使も務める中村橋吾氏が登壇した。

「やまがた紅王」(品種名「山形C12号」)は、平成9年に現在の山形県園芸農業研究所で交配され、育成を開始してから20年以上の歳月を要して、今年プレデビューの運びとなった。交配親は「紅秀峰」×C-47-70(「レーニア」×「紅さやか」)。

やまがた紅王(撮影/麻生雅人)

「『やまがた紅王』の最大の特徴は、なんといっても、その大きさです。500円玉よりも大きい3L~4Lが中心の大玉でございます。食味も大変良好で、果肉がしっかりしており食べ応えがあります。その上、日持ちもするため、将来の輸出も見据えた取り組みを進めています」(吉村美栄子知事)

糖度は「佐藤錦」並みで、酸味はやや少なめ。しっかりとした果肉で歯ごたえもあり、さくらんぼの中では新食感と言えるかもしれない。

「さらに、「やまがた紅王」の収穫時期は佐藤錦と紅秀峰の中間頃となるため、さくらんぼのシーズンとなる6月上旬から7月中旬まで、消費者のみなさまに、山形県産の高品質なさくらんぼを切れ目なく継続してお届することができるようになりました」(吉村美栄子知事)

「本県の果樹でははじめてとなる、生産者登録制度を採用しております。平成30年の秋から令和3年まで4年間に、約2400経営体のみなさまに、約2万6000本の苗木を導入していただきました。

県内に2万本の苗木が導入されるまで、紅秀峰は5年、紅さやかは13年かかったという。やまがた紅王は2年でこれらの記録を突破している。このことからも生産者の期待も大きいと感じているところでございます」

また、「やまがた紅王」は知的財産保護とブランド力強化を図るため、国内外で名称とロゴマークの商標登録を行っているという。

「国内ではすでに登録が完了しており、国外でも順次登録が進んでいるところでございます」(吉村美栄子知事)

今年の出荷量見込みは約6トンで、県全体のさくらんぼの平年の生産量(約1万3300トン)の0.05%ほどだが、本格的なデビュー年となる来年(2023年)は20トンの出荷が見込まれているという。

「その次は40トン、80トンと、出荷量を年々増やしていく予定でございますので、期待してお待ちいただければと思います」(吉村美栄子知事)

左から 中村橋吾氏 、吉村美栄子知事、JA全農山形運営委員会会長・折原敬一氏、(株)サンフルーツ販売部長・阿部昌弘氏(撮影/麻生雅人)

JA全農山形運営委員会の折原敬一会長は、生産者を代表してあいさつを行った。

「『やまがた紅王』は、これからの山形県産さくらんぼをリードする品種として、消費者からも生産者からも期待される品種。知名度の向上と、高品質で安定的な栽培に向け、生産者とJAが一体となって取り組んでまいります」(折原敬一会長)

1973年設立の果実専門店で、全国の高級ブランドの立ち上げにも携わってきたという(株)サンフルーツの阿部昌弘販売部長は、「やまがた紅王」に数年前から期待していたと語った。

「昨年度も弊社で展示PRをさせていただき、多くのお客様から高い関心が示されていました。今年プレデビューを迎え、サンフルーツでも販売を開始しました。大きさ、甘さ、果肉のまろやかさに驚いて、すでにリピーターとなってくださっているお客様もいらっしゃいます」

山形県出身なので子供のころからさくらんぼはよく食べていたという中村橋吾氏は、さくらんぼ界に新たなスターが生まれたと、「やまがた紅王」への応援メッセージを語った。

「わたくしも早速食べさせていただいたのですが、まあ、美味しい。すっごい美味しいです。甘くて、おっきくて、見た目も非常に美しい。歌舞伎でいえば千両役者です」(中村橋吾氏)

中村橋吾氏 (撮影/麻生雅人)

さらに吉村知事は、今回の会見を歌舞伎座で行ったことについて、日本を代表する伝統文化の発信地である歌舞伎座から「やまがた紅王」が世界に羽ばたいて欲しいという願いを語った。

「今年はプレデビューで、来年が本格デビューとなりますが、世界に羽ばたける品種だと思っています。しっかりと生産者と行政でタッグを組んで、国内外にPRして将来の輸出を視野に取り組んでいきたいと思っているところです」(吉村美栄子知事)

吉村美栄子山形県知事(撮影/麻生雅人)

世界に向けて羽ばたく「やまがた紅王」。明治39年から昭和53年までの間に5,826人の県人が移住して、山形県人会を中心に交流が推進されてきたブラジルに届けられる可能性について、吉村美栄子知事に質問をした。

「ブラジルには非常に多くの山形県人会の方がいらっしゃいます。私も県の訪問団と共に山形県人会60周年式典(2013年)に参列させていただきました。山形の日本酒(「出羽桜」)も輸出されています。『やまがた紅王』は、果肉が固く日持ちがするという特徴を持っていますので、これまでのさくらんぼが輸出に対応できなかった場所にも届けることができる可能性があるのではないかと思っています。『やまがた紅王』は輸出も見据えて、国内外にその魅力を届けられるよう取り組んでまいります。いつか、地球の反対側にも届けられるようになったらいいなと思います」(吉村美栄子知事)

(文/麻生雅人)