カタールW杯 ブラジル第2戦、苦しみながらも1-0で勝利。決勝トーナメントに進出決める

2022年 12月 2日

Richarlison em disputa de bola
11月28日(月)、カタール、スタジアム974で行われたブラジル対スイス戦(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

11月28日(月)19:00(日本時間29日(火)午前1:00)にブラジル代表にとっての第2戦、スイスとの対戦がカタールのスタジアム974で行われた。

このスタジアムは、974個のコンテナを使った仮設スタジアムとのこと。さすがにこれだけ狭いカタールに8個もスタジアムを作ってどうするのだろうと思っていたら、このような仮説スタジアムも含まれていたのだ。

ブラジルのスタメンは、初戦で負傷したネイマール(パリ・サンジェルマン)とダニーロ(ユヴェントス)に変わり、フレッジ(マンチェスター・ユナイテッド)とミリトン(レアル・マドリード)が選出された以外は第1戦と同じメンバーだった。

ミリトンはダニーロと同じ右SBに入ったが、フレッジの位置はボランチで、ルーカス・パケタがネイマールの代わりの1.5列目に配置された。

前半、ブラジルがゲームを支配して攻めるのだが、今一つペースをつかみ切れていない印象だった。決定機はいくつかあったが決めきれない。

そんな中で一番目立っていたのはヴィニシウス(レアル・マドリード)。左サイドを縦横無尽に駆けめぐるが、スイスも最も警戒していたようで3~4人で囲んでディフェンスしており攻撃の芽をつぶしていた。第1戦ではそんなヴィニシウスをネイマールがいい距離感を持ってフォローしていたが、この試合ではヴィニシウスが孤立する場面も見受けられた。

Vinícius Júnior
11月28日(月)、カタール、スタジアム974で行われたブラジル対スイス戦のヴィニシウス・ジュニオール(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

ダニーロの代役はミリトンが十分こなしていたが、ネイマール不在の痛手は思った以上に感じられた。

前半はゴールを決められず、0-0で折り返す。

後半開始からルーカス・パケタに変えロドリゴ(レアル・マドリード)が投入された。チチ監督は、珍しく早く動いた。

通常右サイドを主戦場にしているロドリゴだが、この日は左寄りの1.5列目でプレー。何度となくスピードに乗ったドリブル突破を図り、時にはシザース気味に相手を抜こうとしたりして、十分に持ち味を発揮していた。

しかし、ゴールを奪えない中、スイスにいくつかの決定的なチャンスが訪れる。スイスのいい時間帯が訪れた。ここをなんとかブラジルも耐えた。

57分、ブラジルはフレッジに変えブルーノ・ギマラインス(ニューカッスル)を投入。ほぼ同時にスイスも2人の交代を行った。スイスも、今が勝負どころとみて攻撃の手を緩めなかった。

Fred em disputa de bola
11月28日(月)、カタール、スタジアム974で行われたブラジル対スイス戦のフレッジ(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

そして65分、ヴィニシウスがドリブル突破からGKとの1対1を落ち着いて流し込みゴールが決まった、と思ったがVARによりオフサイドの判定。残念ながらゴールは認められなかった。この日一番いい動きをしていたヴィニシウスにはゴールを決めてほしかっただけに残念だった。

その後も、ヴィニシウスはスピードに乗ったドリブル突破を見せていたがスイスDFにファウルで止められたりしてしまう。

72分にはリシャーリソン(トッテナム)、ハフィーニャ(バルセロナ)に変わりガブリエウ・ジェズス(アーセナル)、アントニー(マンチェスター・ユナイテッド)を投入。前線にフレッシュな選手を入れた。

ブラジルは途中出場のロドリゴやアントニーが躍動しゴールを狙うも、決め切れない。

そんな中、終盤に差し掛かった82分、ゴール前の混戦からカゼミーロ(マンチェスター・ユナイテッド)が豪快なシュートを打ち込みゴールを決めた。

Casemiro2 Brasil x Suíça pela segunda rodada da fase de grupos da Copa do Mundo Catar 2022. Fotos Lucas Figueiredo_CBF
11月28日(月)、カタール、スタジアム974で行われたブラジル対スイス戦のカゼミーロ(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

ゴールが決まってもVARなどがありすぐには安心できないが、今度は文句ないゴールだった。第1戦のリシャーリソンのようにカゼミーロもアップしている仲間たちのところに走り寄って、ブラジル人選手たちは全員で輪になって喜んでいた。

その後、85分にはアレックス・サンドロ(ユヴェントス)からアレックス・テレス(セビージャ)へ同じポジションでの交代を行った。この時は気づかなかったが怪我による交代だったらしい。

サブの攻撃の選手たちにとってはせっかくもらった出場機会なのでゴールが欲しいところだ。しかし、ロドリゴやアントニーは積極的にシュートを打つが決まらなかった。

ATは6分。最後はボールをキープして1点を守り切り、ブラジルが1-0で勝ち、グループリーグ突破を決めることができた。

VIP席で観ていたセレソンのレジェンド、2002年日韓大会の優勝メンバーであるカフー、ロベルト・カルロス、ロナウドも拍手を送り喜んでいた。

この試合を見て率直に思ったのは、ネイマールの不在が思った以上に響いているということだ。

ネイマールは2列目~1.5列目で自由に動き回り、いい攻撃のリズムをつくることができる。そんなネイマールが不在のため攻撃はかなり単調に感じられた。

一番目立ったのはヴィニシウスだ。相手選手たちにとっても一番怖い選手という認識があり、徹底的にマークされていた。次いでロドリゴだろう。後半45分間だけのプレーだったが、縦横無尽に駆けめぐり自分の持ち味を発揮していた。

なかなかゴールが生まれず苦しんだが、勝ち切ることができたことはとても大きい。決勝トーナメント進出を決め、選手たち、そしてチチ監督もほっとしていることだろう。まだグループ1位になるか2位になるかは決まっていないが、グループ内の勝ち点をみると1位通過は濃厚だろう。次節引き分け以上で1位通過が決まる。

また不安材料としては、この日の試合でアレックス・サンドロが怪我をしてしまったことだ。次節は欠場する模様。

これで、前試合で負傷したネイマール、ダニーロとともにサントスの黄金期を支えた3人が揃って負傷してしまったことになる。私もちょうどその頃ブラジルに在住しており、この3人が一緒にプレーする姿をリアルタイムで日々見続けてきた。そんなこともあり、この3人に対する思い入れはとても強い。今回のW杯メンバーに選ばれ、初戦のセルビア戦で3人が揃ってプレーする姿を目にし、何とも言えない嬉しさを感じた。あの頃から約10年の時を経て、3人が一緒にプレーする姿を見ることは今大会の大きな楽しみの一つであった。3人ともに怪我から回復し、決勝トーナメントで復帰できることを強く願っている。

次のブラジル戦は、12月2日(金)22:00(日本時間3日(土)早朝4:00)にカメルーンとグループリーグの最終戦を戦う。

おそらく、先発は相当入れ替えてくるだろう。出場機会に飢えたサブのメンバーたちがどんなプレーを見せてくれるか楽しみである。

(文/コウトク)

著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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