新生なでしこジャパン、4-0の快勝で初戦を飾る

2024年 10月 27日

パリ五輪後、池田監督が退任し、新たなサイクルが始まったなでしこジャパン。

新たな門出となる試合が、10月26日(土)に韓国相手に国立競技場で行われた。

新監督は決まらず、佐々木則夫氏が監督代行として指揮を執った。そして、内田篤人氏がコーチに加わったことが話題となっている。

試合は、熊谷紗希(ASローマ)、南萌華(ASローマ)、守屋都弥(INAC神戸レオネッサ)、北川ひかる(BKヘッセン)の4バックそして、、長野風花(リバプール)、長谷川唯(マンチェスター・シティ)のダブルボランチ、その前には左に中嶋淑乃(サンフレッチェ広島レジーナ)、右に藤野あおば(マンチェスター・シティ)、そして2トップに清家貴子(ブライトン)、田中美南(ユタ・ロイヤルズ)という4-4-2の布陣。キャプテンは、長年勤めた熊谷に代わり、GK山下杏也加(マンチェスター・シティ)が務めていた。

開始早々から日本がボールを支配する展開が続く。

2月の試合でも感じたが、チームの心臓は完全に長谷川だ。トレードマークのポニーテールを揺らしながら、ピッチを縦横無尽に駆けめぐり、的確なパスを供給していた。

相手の韓国とはだいぶ力量差があるように感じられた、

圧倒的にボールを支配し優位に試合を進めるが、なかなかゴールは決まらない。

そんな中、前半32分に、長谷川の右コーナーキック(CK)から北川がニアでうまく頭で合わせ待望の先制点が生まれた。

この日、左サイドで上下動を繰り返し、攻守によい動きを見せていた北川が、大仕事をやってくれた。

その後立て続けにゴールが決まった。

先制点の2分後には、左サイドの北川から田中へとつなぎ、マイナスのクロスを藤野がうまく合わせてゴールを決める。清家が体を入れ替えて相手DFの動きを封じ込めたことで、藤野が楽にゴールできた。記録上アシストもゴールもつかないが、清家の動きはうまいと感心した。

また、その3分後には、田中が1対1を冷静に決め、5分間で一気に3点入った。

前半は3-0で終えた。

後半開始と同時に日本は3人交代した。

中嶋、長野、田中に代え、浜野まいか(チェルシー)、谷川萌々子(FCローゼンゴード)、植木理子(ウェストハム)が入り、それぞれ、同じポジションでプレーした。

後半早々に日本はヒヤッとしたシーンがあったが、ここはGK山下がなんとかボールに触り、事なきを得た。危なかったシーンは試合を通して、これくらいだった。

後半一番目立ったのは、後半から投入された谷川だっただろう。相当に積極的に動いていた。

後半11分、そんな谷川の積極性が実を結んだ。

オーバーラップで前線まで走っていた守屋からのクロスを谷川がうまく合わせてゴールを決めたのだ。守屋に対して積極的に手を挙げてアピールした谷川の積極性が光ったプレーだった。

この日右SBの守屋も、後半は積極的にオーバーラップを仕掛けていた。左サイドで大活躍だった北川の動きに感化されたようだった。

右SBは清水梨紗(マンチェスター・シティ)という絶対的な存在がいるが、怪我で離脱中だ。守屋にとっては大きなチャンスでもあり、十分にアピールしたいところだろう。

その後、日本の選手交代は、後半14分に清家から千葉玲海菜(フランクフルト)、後半23分に長谷川から塩越柚歩(三菱重工浦和レッズレディース)、そして後半34分に守屋から遠藤優(三菱重工浦和レッズレディース)への交代が行われた。それぞれ同じポジションでの交代だった。

力量差があったせいかもしれないが、危ないシーンはほとんどなく、日本の選手たちは一人ひとり技術力がしっかりしていて上手い印象を受けた。

後半終盤の10分強の出場にとどまった右SBに入った遠藤優も、すごい距離を前線まで走り込んで果敢なオーバーラップを見せていたし、これからのなでしこジャパンは楽しみな選手が多いと感じた。

そのまま試合は終わり、4-0で日本の快勝となった。

試合後、ミックスゾーンで何人かの選手の声を聞けたが、皆一様に満足感、手応えを感じているようだった。

その中でも特に印象に残ったのは、北川選手だった。新生なでしこの初ゴールを決め、左サイドで水を得た魚のように生き生きとプレーする姿は、この日もっとも輝いていたように見えた。内田コーチの存在は、同じサイドバックということもあり、とても大きいと話してくれた。

また、長谷川選手によると、新監督が決まればメンバーもがらりと変わる可能性はあるということだ。新監督が決まらない中でも代表合宿はまだ3日間続くので、個人というより組織でやるべきことをしっかり行っていきたい、と強く語ってくれた。

「新監督についてはいろいろと可能性を広げて、世界一を目指せるようなチーム作りができる監督を年内には決めたい」と言うのが同じくミックスゾーンに姿を見せた宮本恒靖会長の言葉だ。早く決まってほしいということは選手たちにとっても共通の思いだろう。

気になったこととしては、入場者数の少なさが挙げられる。この日の観客数は12,420人だった。約67,000人収容の国立競技場において、実に寂しい数字だ。

国立競技場で何度もサッカーの試合を見ているが、試合前の閑散ぶりには目を見張った。

2層、3層は開放しておらず、観客が入ったのは1層だけだったが、そんな1層でも空席は目立った。観客は1層だけで、あとは3層の記者席だけに人が入っているというあまりない光景だった。

宮本会長も話していたが、これから更なる高みを目指し、結果も出して、女子サッカー全体を盛り上げていくことが必要になってくる。

なでしこジャパン(代表)に選ばれる選手たちの多くが、海外のクラブでプレーしており、選手個々の技術力はとても高い。そんな選手たちのプレーを見ることができてとても楽しく感じた。WEリーグ(国内リーグ)も含め、女子サッカー全体が盛り上がるよう、これからますますレベルの高い試合を見せてくれることを期待したい。

(文/コウトク)

著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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