カタールW杯 リシャーリソンが魅せた! ブラジル初戦は2-0で快勝

2022年 11月 27日

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11月24日(木)、カタール、ルサイルスタジアムで行われたブラジル対セルビア戦で2発のゴールを決めたリシャーリソン(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

11月20日(日)(日本時間21日(月))に開幕してグループリーグが始まったFIFAワールドカップ(以下W杯)カタール大会。

日本が強豪ドイツに劇的な逆転勝ちをして、日本でも一気に盛り上がりを見せているが、ブラジルの初戦が24日(木)22:00(日本時間25日(金)早朝4:00)にセルビアを相手に行われた。

この試合はグループリーグ第1節の最後の試合となった。世界ランキング1位のブラジルが満を持して最後に登場したと言ってもよいだろう。

今大会、ブラジルはセルビア、スイス、カメルーンと同じグループリーグで戦うのだが、4年前のロシア大会でもブラジル、セルビア、スイスは同じグループで戦っており、奇遇ともいえる組み合わせになっている。

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11月24日(木)、カタール、ルサイルスタジアムで行われたブラジル対セルビア戦。ブラジル代表メンバー(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

ブラジルの先発メンバーは以下の通り(番号は背番号)。

GK:1.アリソン(リヴァプール)

DF:2.ダニーロ(ユヴェントス)  

   4.マルキーニョス(パリ・サンジェルマン)

   3.チアゴ・シウヴァ(チェルシー)

   6.アレックス・サンドロ(ユヴェントス)

MF:5.カゼミーロ(マンチェスター・ユナイテッド)

   7.ルーカス・パケタ(ウエスト・ハム)

   10.ネイマール(パリ・サンジェルマン)

FW:11.ハフィーニャ(バルセロナ)

   9.リシャーリソン(ヒシャーリソン)(トッテナム)

   20.ヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリッド)

この選手たちが指揮官チチ監督の考えているベストメンバーと考えてよいだろう。

順当だと思う。

前線にはタレントが豊富なだけに誰が選ばれるか注目していたが、右のハフィーニャ、左のヴィニシウスは鉄板だろう。センターフォワードには、直近まで怪我をしていたリシャーリソンが入った。チチ監督にとってみればもっとも信頼できるセンターフォワードはリシャーリソンなのだろう。怪我明けとはいえ、今W杯南米予選で8試合6ゴールという数字は傑出している。

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11月24日(木)、カタール、ルサイルスタジアムで行われたブラジル対セルビア戦。左からリシャーリソン、ネイマール、ハフィーニャ(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

そして、左右のサイドバックはサントス、ポルト、ユヴェントスと数々の有力クラブで共にプレーをするダニーロとアレックス・サンドロが揃って選出された。かつてのサントスでのチームメイト ネイマールとともに世界最高の舞台 W杯で先発出場できるとは喜びもひとしおだろう。

エースのネイマールは、かつては左ウイングを主戦場にしていたが、今では2列というか1.5列目で自由にプレーしている。

そして、キャプテンはCBのチアゴ・シウヴァだ。最年長は39歳のダニエウ・アウヴェスだが、チアゴ・シウヴァもいつの間にか38歳になっているが、いまだに不動のCBとしてキャプテンまで務め上げている姿には頭が下がる。

対するセルビアは、監督が名古屋グランパスでも活躍したピクシーことストイコビッチ。

有力選手といえば、プレミアリーグで今シーズンゴールを決めまくっているFWミトロビッチ(フラム)は先発していたが、昨冬にユヴェントスに加入したFWヴラホビッチはコンディションがよくないせいか先発ではなかった。

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11月24日(木)、カタール、ルサイルスタジアムで行われたブラジル対セルビア戦。ネイマール(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

試合は落ち着いた入りだったが、ブラジルペースで進んでいく。

ネイマールは中盤で自由に動いてボールに触っていたが、やはりマークはきつく、開始5分で激しいチャージを受けセルビア人DFはイエローカードをもらっていた。

個人的に注目している両SB ダニーロとアレックス・サンドロも落ち着いてプレーしていた。今のセレソンの特徴の一つかもしれないが、両WGがサイドを広く使い激しく上下動するせいもあり、両SBがかなり中央に入り込んでいるのが印象的だ。

そして、CB、特にチアゴ・シウヴァから効果的な縦パスが入り決定機をつくり出していた。

チチ監督のサッカーの大きな特徴の一つは全員攻撃全員守備だと思うが、そのために、攻撃陣にも守備が求められるし守備陣にも攻撃が求められる。

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11月24日(木)、カタール、ルサイルスタジアムで行われたブラジル対セルビア戦。ブラジル代表のチチ監督(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

両SBの攻撃力はもちろんだが、中盤のカゼミーロ、そして守備範囲の広いルーカス・パケタはよく走りボール奪取し、ピンチを事前に防いでいる。そして最前線のリシャーリソンも守備の意識は強く献身的に守備も行っている。

前半は、セルビアのいい時間帯もあったが、全体的にはブラジルがほぼボールを支配しチャンスも多くつくっていた。しかしゴールは奪えず0-0で終わりハーフタイムを向かえた。

後半に入るとき、ネイマールが最後にチチ監督と話しながら控室からピッチへ向かい、一人遅れてピッチに入り靴紐を結んでいたが、その最中に試合は始まった。セルビアのキックオフだったが、ネイマールの靴紐が結び終わるまでパス回しなどして攻撃を始めず、とても紳士的なプレーだと思った。

後半は開始早々からブラジルがギアを上げてきた。

ハフィーニャが早々にシュートを打ち、その数分後にネイマールがPA少し外で倒され

いい位置でFKが与えられた。

ボールに近づくのはネイマールとハフィーニャ。6月に国立競技場で行われた日本対ブラジル戦で何度も見られたシーンだ。ネイマールが蹴ったボールは惜しくも壁に当たった。

前半は右SBのダニーロが内側にポジションを取ることが目立ったが、後半は左SBのアレックス・サンドロが内側に切れ込みチャンスをつくり出していた。

54分にはそんなアレックス・サンドロからヴィニシウス、そしてネイマールへつながる。しかしネイマールのシュートは惜しくも枠外へ外れた。

また、59分には同じく内側に切り込んだアレックス・サンドロが強烈なミドルシュートを放った。目の覚めるような鋭いシュートは惜しくもポストに直撃しゴールとはならなかったが強烈な印象を与えた。

そして62分、ついにブラジルに待望の先制ゴールが生まれる。

ネイマールがPA内に切り込み、ヴィニシウスがシュートを打ち、そのこぼれ球をリシャーリソンが決めたのだ。

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11月24日(木)、カタール、ルサイルスタジアムで行われたブラジル対セルビア戦。リシャーリソン(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

ゴールを決めたリシャーリソンは一目散に控えメンバーがアップしているピッチサイドに走り込み、ベンチメンバーも全員で輪になって喜びを爆発していた。

そして、セルビアは65分にやっとヴラホビッチを投入。しかしながら、あまり目立った動きはできなかった。

ゴールが決まりだいぶ安心できるようになったブラジルだが、その後も試合を支配した。

そんな中、またもリシャーリソンが決めたのだ。

73分、左サイドを切り込んだヴィニシウスからのクロスをゴール正面で構えていたリシャーリソンが、ワントラップし空中に浮いた球をオーバーヘッド気味に体を反転させてシュートを打ったのだ。スピードに乗った球はきれいにゴールマウスに入っていった。

まさにゴラッソ中のゴラッソだ。これだけ美しいゴールはなかなかないだろう。またもセレソンメンバーたちは輪になって全員で喜んでいた。

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11月24日(木)、カタール、ルサイルスタジアムで行われたブラジル対セルビア戦。リシャーリソン(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

その後、ブラジルは前線の選手たちを次々と交代させた。

74分にはルーカス・パケタとヴィニシウスに変わりフレッジ(マンチェスター・ユナイテッド)とロドリゴ(レアル・マドリッド)へ。それぞれ同じポジションに入った。

78分にはリシャーリソンとネイマールに変えガブリエウ・ジェズス(アーセナル)とアントニー(マンチェスター・ユナイテッド)を投入。

そして86分にはハフィーニャからガブリエウ・マルティネッリ(アーセナル)へ最後の交代枠を使った。

出場機会に飢えたサブメンバーの怒涛の攻撃は凄まじかった。先発メンバーともほとんど遜色なくプレーしていた。皆世界的にみれば超一流のサッカー選手たちだ。与えられた機会を最大限に活かしたいはずだ。

後半のATは7分あったが、サブメンバーによる怒涛の攻撃もゴールには結びつかず、そのまま2-0でブラジルが初戦を勝利で飾った。いつもはスロースターター気味のブラジルだが、今大会は幸先のよいスタートを切ることができた。

ベンチに下がっていたリシャーリソンは、いろいろな選手たちから祝福を受けていた。文句なくこの試合のマンオブザマッチ(MOM)に輝いたのはW杯デビュー戦で2ゴールをあげたリシャーリソンだった。

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11月24日(木)、カタール、ルサイルスタジアムで行われたブラジル対セルビア戦(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

リシャーリソンは、イングランドプレミアリーグのビッグ6であるトッテナム所属の25歳。

昨年行われた東京五輪の優勝メンバーであり、10番を背負い得点王にも輝いた。東京五輪のU24ブラジル代表はまさにリシャーリソンのチームと言っても過言ではなかった。

セレソン(A代表)の初選出は2018年。その後コンスタントにメンバー入りしており2019年のコパアメリカでは優勝に貢献した。

クラブでは、プレミアの中堅クラブであるエヴァ―トンで4シーズンプレー。135試合で43ゴールを決めている。

そして、今シーズンからUEFAチャンピオンスリーグ(CL)の出場権を得たトッテナムに移籍。エヴァ―トンでは絶対的エースだったが、ケイン、ソン・フンミン、クルゼフスキーの強力3トップを擁するトッテナムでは当初はサブとしての出場を余儀なくされていた。

強面のルックスでビッグマウス。その外見からは想像もつかないが、守備意識が強く、守備をまったくさぼらない。センターフォワードのイメージが強いが、前線ならサイドでも中央でもどこでもできる意外と器用な選手だ。

今季CLの初戦では先発出場し2ゴールを挙げ鮮烈なCLデビューを飾った。

しかしながら、今季途中から怪我によりしばらく戦列を離脱したこともあるが、プレミアリーグではまだゴールを決めていない。しかし、献身的な動きで勝利には貢献しており、監督・チームメイトからの信頼は厚く、前線ならどこでもできるユーティリティさは新しいチームでも重宝されている。

戦列に復帰したのは11月に入ってからだった。そんな状況もあり、本人はW杯メンバーに選ばれるかどうか相当に不安だったようだ。東京五輪の得点王で金メダルも獲得したが、今W杯でも得点王になり優勝する可能性も十分に考えられるだろう。

しかし、ブラジルには不安材料もないわけではない。何とこの試合でネイマールとダニーロが怪我をしてしまいグループリーグの残り2試合を欠場するとの情報が入ってきた。

ブラジルにとってはとても残念なことだが、層の厚いサブのメンバーでも十分にやってくれることだろう。まずはグループリーグを突破し、決勝トーナメントではまたこの2人の素晴らしいプレーを見たいと思う。

ブラジルの第2戦は、28日(月)19:00(日本時間29日(火)午前1:00)にスイスと対戦する。

(文/コウトク)

著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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