ブラジル代表監督、二転三転を経てドリヴァウ・ジュニオールが正式に就任
2024年 01月 30日
前回、2022年のワールドカップ(カタール大会)では、優勝候補の筆頭だったブラジル。ブラジル国民の期待を一身に受けたチチ監督率いるセレソンだったが、残念ながら準々決勝で敗退。引責辞任のような形でチチ監督は退任した。
FIFAランキング1位で臨んだ大会だったが、あっけない敗退だった。ブラジルサッカーの限界もささやかれ、外国人監督の招聘も議論される中、次期監督がなかなか決まらない状態が続いていた。
正式な監督不在の状態がしばらく続いたが、まずは2023年3月と6月の親善試合では、U20代表のラモン・メネゼス監督が暫定で指揮を執ることになった。そして2023年7月には、1年後にレアル・マドリードのカルロ・アンチェロッティ監督が就任することを前提に、フルミネンセのフェルナンド・ジニス監督がそれまでのつなぎ役として兼務で指揮することになった。
しかし、ものごとは思うようには進まない。
最初に指揮を執ったラモン・メネゼス監督は、初戦、W杯で旋風を起こしたモロッコ相手に1-2で負けてしまう。その後もギニア相手に勝つことはできたが、セネガルとの対戦は落とし、1勝2敗で務めを終えた。
そして、アンチェロッティ監督へのつなぎ役としてクラブチームと兼務という形で就任したジニス監督は、9月からのW杯(2026年大会)南米予選から指揮を執ることになった。しかし最初の2試合こそ勝つことはできたが、3戦目のベネズエラ戦の引き分けをきっかけにその後3連敗を喫し、10か国中6位と過去例を見ないぐらいの苦戦を強いられている。
そんな中、頼みの綱のアンチェロッティ監督がレアル・マドリードとの契約を更新したとの驚くようなニュースが入ってきた。これで完全に予定が狂い、また一から監督選びをしなければならなくなった。つなぎ役だったジニス監督は成績不振で解任され、サンパウロFCで指揮を執っていたドリヴァウ・ジュニオール監督が正式に就任することが決まった。
このニュースを聞いて、結局セレソンは何も変わらないな、というのが正直な印象だった。
ドリヴァウ・ジュニオール監督はブラジルでは知らない人がいないほど有名な監督である。常にブラジル国内のクラブチームの監督を務めており、近年ではフラメンゴの指揮官として2022年のコパ・リベルタドーレスを制覇している。
筆者にとっても非常に身近に感じる存在だった。2010年サントスの監督に就任し、当時18歳のネイマール、20歳のガンソを積極的に起用し、サンパウロ州選手権、コパドブラジルを制覇。ネイマール、ガンソを中心としたまさに新しいサントスの黄金期を築き上げた監督だったのだ。しかし当時のドリヴァウ・ジュニオール監督は、ネイマールをめぐる起用法によりサントスを解雇されてしまう、というオチが付くのだが、それは過去の話だ。
そんなドリヴァウ・ジュニオール監督は、確かにブラジル国内では屈指の監督だと思うが、所詮国内のクラブでしか監督経験はない。今、絶不調のセレソンをテコ入れするには、賛否両論あると思うが、外国人監督を招聘することが理にかなっていると筆者は考えていた。
パウメイラスで成功を収めたアベウ・フェレイラ監督やフラメンゴで2019年にコパ・リベルタドーレスを制したジョルジェ・ジェズース監督といった、ブラジルのクラブで実績を上げたポルトガル人に任せることも考えられただろう。
とはいえ、正式に次期監督がドリヴァウ・ジュニオール監督に決まった以上、セレソンには頑張ってほしいし応援したい。
まずは3月にイングランド、スペインといったヨーロッパの強豪と親善試合を行うことが決まっている。この時期ヨーロッパでは国際Aマッチデーを使いUEFAネーションズリーグというヨーロッパ独自の大会を行っている関係上、なかなか他の大陸の国と親善試合を組みにくい。そんな中で、ヨーロッパの強豪2チームと親善試合ができることは、世界の中での実力を知るという意味でもとても貴重な機会となる。強豪中の強豪なので勝つことは簡単ではないかもしれないが、内容も含めてどのような試合を行うか、また選手選考にも注目していきたい。
そして、当面の最大の目標は6~7月に行われるコパアメリカということになるだろう。
地に落ちたセレソンの地位を取り戻すためには、威信をかけてこの大会に優勝するしかないだろう。今のワールドカップ南米予選を見ている限り、かなり難しそうにも感じるが、タレントは揃っているように感じる。ドリヴァウ・ジュニオール監督がどのようにセレソンを改革していくのか、十分に見守っていきたいと思う。
(文/コウトク)