おめでとうメッシ!ネイマールも祝福。コパアメリカ2021はアルゼンチンが28年ぶりに優勝

2021年 07月 14日

7月10日(土)、リオデジャネイロ市マラカナンスタジアムで行われたコパアメリカ2021決勝、ブラジル対アルゼンチン戦(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

7月10日(土)21:00(日本時間11日(日)午前9:00)からリオデジャネイロのマラカナンで、コパアメリカ2021の決勝戦が行われた。

この日、ブラジル対アルゼンチンという世界中のサッカーファンが望んだ対戦カードが決勝の舞台で実現した。

7月10日(土)、リオデジャネイロ市マラカナンスタジアムで行われたコパアメリカ2021決勝、ブラジル対アルゼンチン戦(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

今大会は、それぞれのエース、ネイマール(パリサンジェルマン)とメッシ(バルセロナ)が絶好調で、そんな二人のクラッキの盟友対決ということでも注目を浴びた。

今まで無観客で開催していた今大会だったが、急遽この決勝戦だけ10%の観客を入れての開催となった。融通が利きすぎるようにも思うが、このアバウトさが南米らしい。

大きな国際大会の決勝戦ということで、キックオフの前には閉会のアトラクションがCGで行われていた。

ゆっくりした展開で進んでいたこの試合、しばらくはブラジルのリズムでゲームは進んでいたが、アルゼンチンが一瞬の隙をつき、カウンターからゴールを決めた。

ロドリゴ・デ・パウル(ウディネーゼ)からの1本の縦パスが、前線にいたディ・マリア(パリサンジェルマン)に通り、ブラジルのDFロディ(アトレチコマドリッド)が振り切られ、GKと一対一になったディ・マリアがきれいにゴールを決めたのだ。

前半22分のことだ。

一瞬のことだった。電光石火の鮮やかなゴールだった。呆気に取られてしまった。

ほとんどチャンスらしいチャンスのなかったアルゼンチンが、ファーストチャンスでゴールを決めた。

このゴールを機に、試合はアルゼンチンのペースになった。

7月10日(土)、リオデジャネイロ市マラカナンスタジアムで行われたコパアメリカ2021決勝、ブラジル対アルゼンチン戦(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

前半の終了間際になり、ブラジルは久々にシュートまでいくことが出来、ブラジルが再びペースをつかんだ。

後半は、ブラジルが激しく攻めた。

ブラジルにとっては、まだ時間は十分にあったが、ゴールだけが決まらない。

ネイマールは、魅せてくれた。

相手選手が密集する中を、3,4人のDFを剝がしながらドリブル突破する姿には心躍らされた。倒れず、強さを持ったドリブル。なかなか見られるものではない。

ドリブルだけでなく、絶妙なラストパスを何本も入れ、チャンスを演出していた。

しかし、ゴールだけが決まらない。

いつ決まってもおかしくないほどの波状攻撃だったが、時間は刻一刻と進んでいく。

7月10日(土)、リオデジャネイロ市マラカナンスタジアムで行われたコパアメリカ2021決勝、ブラジル対アルゼンチン戦(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

だが、そのまま試合は終わってしまった。

1-0でアルゼンチンが勝ち、優勝を決めた。

改めてサッカーは紙一重のスポーツであることを痛感させられた。あの、目が覚めるような電光石火の縦パス1本で決められ、それが決勝点になってしまい、これだけ大きな大会のタイトルが決まってしまった。

7月10日(土)、リオデジャネイロ市マラカナンスタジアムで行われたコパアメリカ2021決勝、ブラジル対アルゼンチン戦(写真/Lucas Figueiredo/CBF)

サッカーは恐ろしい。

運、流れ、めぐりあわせ。それをどれだけ引き寄せるか。

それがサッカーだ。だからこそ、サッカーはおもしろいのだ。

ネイマールは泣いていた。

メッシは、チームメイトから胴上げされていた。

ここ10年ほど、いやそれ以上だろう、世界一の選手であると誰しもに認められてきたメッシだが、なぜか代表でのタイトルだけが取れていなかった。

そんなメッシが、アルゼンチン代表として初めてのタイトルを取ることができた。アルゼンチンにとっては、1993年以来実に28年ぶりの優勝になった。

メッシは嬉しそうだった。世界中のサッカーファンが、メッシを祝福することだろう。

涙を流していたネイマールだが、メッシに駆け寄り、抱き合って健闘を称え合っていた。この光景には、私も感動させられた。

こんな感動的な光景が待っていたのだ。この光景のために、この大会はあったのかもしれない。

そう考えると、この結果でよかったのではないかな、と思ったりもした。

ブラジル監督のチチも賛辞を送り、メッシと話していた。

ネイマールをはじめ、ブラジルの選手たちはすがすがしかった。なかなかここまでのすがすがしい姿は珍しいと思う。

サッカーには、勝者もいれば必ず敗者もいる。いい勝者になれるか、いい敗者になれるか。

試合中は真剣勝負で戦う。

しかし、試合が終われば、勝者・敗者にかかわらず相手を称え合う。

本当に素晴らしい決勝戦だった。

アルゼンチンが優勝することによって、ブラジルだけでなく、ブラジルとアルゼンチンが一緒になって、ヨーロッパ主体の世界のサッカー界に対し、南米の存在感をみせてほしいと思う。

そして、最後に、ABEMA TVに対してである。

今大会の日本における最大の功労者は、ABEMA TVだろう。

ユーロと同時期に行われ、視聴率の見込みもそれほどあったわけではないが、コパアメリカの生配信を急遽決めてくれた。この英断には感謝しかない。

実況、解説者についても一流の方々を招聘し、大会を盛り上げてくれたと思う。

特に、決勝戦の実況は、倉敷保雄さんが務めていた。倉敷さんの誠実な語り口、適度に自分の意見も話される実況は、心に染み入った。

ネイマールへの感動とともに、心が揺さぶられた。

サンパウロ市のブタンタン研究所ではブラジルで初の国産新型コロナウィルスワクチン「ブタンヴァッキ」を開発。7月9日(金)から臨床試験のフェーズ1をスタートしている(写真/GovSP)

南米サッカーを盛り上げるためにも、ABEMA TVには、ブラジルリーグ、アルゼンチンリーグ、そしてリベルタドーレスなどの中継も行ってもらえれば、と思う。

新型コロナウイルスの感染症との戦いでもあった大会だったが、とりあえずは全日程を行うことはできた。

しかし、感染症拡大の影響は、この後出てくるかもしれない。無事に終わったとは現段階ではまだ言えないだろう。

今大会では全試合で、キックオフ前に新型コロナウイルス感染症に関する犠牲者、エッセンシャルワーカーの方々に対する黙とうが行われた。

開催国ブラジルでは、今後、どのような状態になるのだろうか。

ブラジルだけでなく世界中で、しばらくの間はこの感染症と折り合いをつけながら生活していくしかないだろう。一日も早く通常の日常生活を行えるように願うばかりである。

(文/コウトク)

著者紹介

コウトク

2005年6月~2012年6月まで仕事の関係で、ブラジルに在住。ブラジル在住当時は、サッカー観戦に興じる。サントス戦については、生観戦、TV観戦問わずほぼ全試合を見ていた。
2007年5月のサンパウロ選手権と2010年8月のブラジル杯のサントス優勝の瞬間をスタジアムで体感。また、2011年6月のリベルタドーレス杯制覇時は、スタジアム近くのBarで、大勢のサンチスタと共にTV観戦し、優勝の喜びを味わった。

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