ブラジルの人気パティシエ、ディエゴ・ロザーノが日本の料理人、飲食店向けのセミナーを開催
2019年 03月 13日
2月15日(金)、港区青山にある駐日ブラジル大使館で、来日中のブラジルの人気パティシエ、ディエゴ・ロザーノが日本の飲食店関係者や若手料理人に向けて特別セミナーを行った。
このセミナーは、駐日ブラジル大使館とぐるなび総研、ぐるなびが共同で主催した。
ディエゴ・ロザーノ は1月30日から2月14日まで松屋銀座百貨店で開催されたバレンタインフェア「GINZA バレンタイン ワールド」に初出店を果たし、来日中だった。
ディエゴ・ロザーノの日本でのPRを担当するディエゴ・ロザーノ・ジャパンの内藤隆さんはセミナーイベントの開会のあいさつで、日本で暮らすブラジル人の中にもディエゴのファンが多くいることを紹介した。松屋銀座で行われたトークイベントに駆けつけた日系ブラジル人たちは、遠い日本にやってきて脚光を浴びている母国のパティシエはとても誇らしい存在だと語っていたという。
内藤さんによると、ディエゴが、ブラジルを代表する漫画家のひとりマウリシオ・ヂ・ソウザとコラボレーションを行って、日本語が話せなかったり日本になじめない在日ブラジル人の子弟のために、お菓子作りを教えたり、その模様を漫画にして配布するプロジェクトが予定されているという。
セミナーではディエゴ・ロザーノは、食材の融合に関するフィロソフィーについて語ったほか、日本とブラジルの食文化の友好に貢献する可能性を秘めた食材などを紹介した。
「これまでもブラジルで食材の組み合わせに関する実験を数多く行ってきました。日本の食材とブラジルの食材の組み合わせも試みてきました。中には思っていたようにいかなかったケースも多々ありますが、抹茶やかんてんなど自信の持てるものを日本で紹介させていただいています」( ディエゴ・ロザーノ )
とりわけ柚子は、個人的に大好きな食材だという。
「柚子をブラジルのフルーツと融合させる場合は、酸味を中和させるような果物と合わせることを心がけています。日本とブラジルの食材を組み合わせる際に私がこころがけているのは、食材がお互いの魅力を補い合うだけでなく、それぞれの食材の存在感をきちんと感じられることです」(同)
「例えば日本酒をブラジルの食材と合わせて使う場合、日本酒の存在を感じてもらえると同時に、そこに入っているブラジルの食材もきちんと感じてもらえることが大切です。みなさんにとって馴染み深い日本酒の存在と、 まったく新しい体験となるものが同時に楽しめるもの、その両立がなされることが重要だと思っています」(同)
そんなディエゴ・ロザーノは、日本の料理人や職人がブラジルの食材を使ってみたいという場合、最もすすめしたいのが、アマゾンフルーツのクプアスだと語った。ディエゴ自身もクプアスを、創作スイーツの「 ベレン 」や ボンボンショコラ に使っている。
カカオの親戚であるクプアスはビタミンBやビタミンCなど栄養価の高さでも注目されており、リラックス成分のGABAをぐ汲むことから癒し効果も期待できるという。
「クプアスは、学術名をみても共通部分が多いことからわかるように、カカオの親類ですからクプアスの種からチョコレートを作ることも可能ですが、ブラジルでは果肉の部分がジュースやスイーツによく利用されます。クプアスは豊潤な発酵食のような味と香りを持っていて、とても幅広い汎用性があると思います。 日本で利用するのに、とてもお勧めの食材です」(同)
また、利用する食材を通じて、自国の文化を広く世界に知ってもらうことが可能であることもディエゴ・ロザーノはスイーツを通して証明した。
「GINZA バレンタイン ワールド」 で提供したボンボンショコラ詰め合わせセットでは、クプアスだけでなく、アセロラ、タペレバ(カジャ)といったアマゾンフルーツを使って、ブラジルの豊かな自然が育んだ食材の多様性を伝えた。
「タペレバは独特な味を持っているため、『何々に似た味』という比較がむつかしい個性的なフルーツです。私はよくスイーツに利用します。日本の緑茶やジンジャーと組み合わせて使ったこともあります」(同)
ボンボンショコラではフルーツだけでなく、蒸留酒(スピリッツ)である
カシャッサ も利用して、 ブラジルで国民的に親しまれているカシャッサと、このお酒をベースに作られるカクテル、 カイピリーニャ の美味しさもアピールした。
「 カシャッサ は、サトウキビから造られる国民的な蒸留酒です。カシャッサをベースにして、ライムた砂糖を使って作るカクテルが カイピリーニャ です」(同)
ベーシックなカイピリーニャにはフルーツはライムしか使われないが、他のフルーツを使った創作カイピリーニャも、ブラジルでは数多く作られている。 クプアスを使ったスイーツ「ベレン」も、実は、クプアスを使ったカイピリーニャがアイディアの源だったという。
「クプアスが採れるパラー州のベレンを訪れたとき、クプアスとクマルー(トンカ豆)を使ったカイピリーニャと出会いました。これを初めて飲んだときの美味しさが忘れられなくて、このハーモニーをお菓子で表現したいという想いから生まれたものです。 敬意を表してお菓子の名前にベレンという街の名前をつけました」(同)
また、SNSを利用したビジネス面における自身のブランディングについても紹介した。
「ビジネスという面で考えるとSNSの活用は欠かせないと思います。私の会社ではSNSのみを担当するスタッフが13名、活動しています。その中にはメッセージ対応、分析専門、デザイナーなどがいます。SNS部門のみで昨年1年で150万ユーロ以上の収益がありました。収益の多くはスポンサーからの収入となります。私が身に着けている時計や、使う食材などの広告収入です」(同)
SNSのフォロワー数を上げるためには、自分のフォロワーが毎日何を観たいのか、何が求められているかを感知して、フォロワーの好みに合わせた情報を発信することが重要だと語った。
「もうひとつ、SNSの発信で私が意識していることは、ブラジル人としての誇りを持つことです。ブラジル人の中には、自分がブラジル人であることを誇らしく感じていない人も少なくないと思います。しかし私は、ブラジルにはカーニバルやサンバ以外にも誇れるものがたくさんあるので、母国の文化に誇りをもって発信していきたいと思っています。ですから日本の料理人のみなさんも、日本の文化に誇りをもって情報を発信してくださることを願っています」(同)
(写真・文/麻生雅人)