クラブワールドカップ2021 南米王者パウメイラス、チェルシーに敗れ世界王者にはなれず
2022年 02月 24日
先述したように、2012年にチェルシーが決勝で敗れた相手がブラジルのコリンチャンスだ。パウメイラス同様、サンパウロの4大チームの一つで、特にこの2チームは犬猿の仲と言われている。この2チームによるクラシコはもっとも激しく、もっとも危険で盛り上がる。
チェルシーにとっては、2度もブラジルのチームに負けるわけにはいかない。
横浜で行われた2012年の決勝戦には私もスタジアムに訪れたが、コリンチャンスの優勝にコリンチアーノ(コリンチャンスのサポーター)たちの熱狂ぶりは尋常ではなかった。あの時のコリンチアーノたちは、今大会では間違いなくチェルシーを応援していることだろう。
そして、パウメイラスにとっても、サンパウロの4大チームのうち唯一世界王者になっていない汚名を晴らすためにも是が非でもほしいタイトルだ。ここで勝てなければ、コリンチアーノをはじめとしたブラジルの他のチームのサポーターたちから笑いものにされても仕方がない状況なのだ。
さて、そんな決勝戦。チェルシーがボールを持つのだが、なかなかうまく攻撃が機能しない。想定していたであろうが、パウメイラスの徹底したカウンターサッカーに戸惑いを見せているようだった。
パウメイラスは、5バック気味の守備的な戦い方なのだが、相手のセンターバックの中央、ブラジル人のチアゴ・シウヴァに対してだけはプレッシャーをかけに行かない。チアゴ以外の選手に対してはプレッシャーをかけに行くので、チアゴ・シウヴァとしては何とも複雑な心境だったろう。センターバックの底以外でボールを奪う作戦なのだ。そして一旦ボールを奪えば、前線に足の速いFWを揃えており、一瞬でチャンスにつなぐことができるのだ。
完全なカウンターサッカーで、とてもブラジルのチームの戦術とは思えないのだが、パウメイラスとすれば、世界の最高峰のクラブチームに勝つために練った作戦であり、まったく咎めることはできない。ただ、見ているほうとしては、とても南米とヨーロッパのサッカーの試合とは思えず、複雑な気持ちになってしまう。
前半は0-0で終了した。チェルシーを混乱に陥れ、パウメイラスにとっては、してやったりという感じではなかっただろうか。
後半、チェルシーは少し修正してきたが、あまり流れは変えられていなかった。
しかし、後半10分、左からのクロスをルカク(ベルギー)が頭で決めたのだ。これはチェルシーにとって喉から手が出るほどほしかったゴールだった。
それからは完全なチェルシーペースになり、チェルシーの攻撃がうまく機能し出した。
と思いきや、そんな時間も長くは続かなかった。チェルシーのゴールからほんの5分が経った頃、パウメイラスがゴール近くの位置からロングスローを駆使し、ペナルティーエリア内でチアゴ・シウヴァがハンドを犯してしまったのだ。
VARの判定の末、パウメイラスにPKが与えられ、それをパウメイラスはきっちりと決め、1-1のドローになったのだ。
これで元気になったのがパウメイラスだ。
スタジアムに詰めかけたパウメレンシ(パウメイラスのサポーター)は急に元気になり、スタジアム全体がパウメイラスの声援に包まれるようになった。
オープンな展開になりつつあり一進一退のサッカーを見せていたが、選手交代などを通し、再び落ち着いた流れになった。
両者決め手を欠き1-1のまま90分が終了し、延長戦に入ることになった。
結局、延長後半12分に、パウメイラスの選手がペナルティーエリア内でハンドを犯し、チェルシーがPKによるゴールを決め、チェルシーが2-1で勝ち、初めての世界一のタイトルを取ることができたのだ。
パウメイラスは世界王者になることは叶わなかった。が、ヨーロッパの超強豪チーム相手に、延長戦まで持ち込み、健闘したという印象だ。
チェルシーは優勝こそしたが、その戦いぶりには不甲斐なさを感じた。ヨーロッパの王者としてもう少し風格を見せてほしかった。
チェルシーが優勝し、パウメイラスが準優勝という結果で終わった今大会だが、来季(2022大会)以降の開催についてはまだ決まっていないようだ。開催頻度を変更し出場チーム数を増やすなど、開催方法の見直しが常に叫ばれている本大会であるが、コロナ禍ということもあり、なかなか大々的な変革を行うことは難しいのかもしれない。
しかし、数少ないクラブチームの国際大会ということで、とても貴重な大会であることは間違いない。今まで以上に盛り上がる大会にしてほしいと思うし、ナショナルチームの大会とは違ったおもしろさを見せてほしいと切に願う。
(文/コウトク)